そこまでやらなきゃだめなの?

一生一度のことだったり、長年のぞんでやっとかなったことだったりすると、がんばりすぎ、はりきりすぎも、起こります。「いいママにならなきゃ!」って脅迫観念とか、「こどもによかれ」と思う気持ちのあまり、ぶっとんじゃうんですね。

妊婦さんや産婦さんというのは、ふだんは出ないホルモンが出まくっている状態。異状とはいえませんが、正常ともいいがたい。

儲けたいひとにとって、彼女たちは、絶好のカモであります。

 

とある妊婦さんに聞いてビックリしたのですが、「特殊なオムツ」を強烈にすすめるあまり、妊婦さんたちを集めて「講習会」を開いたりしちゃうところもあるんですって。

そこでは、一般的な市販の紙オムツは90パーセント石油製品だからよくない、とおっしゃるそうです。また、そこのすばらしい商品以外の布オムツがどんなに肌ざわりがわるくて赤ちゃんによくないか、実際に、水で濡らしてみせて、さわらせて、おかあさんたちに比べさせて、実感させるそうです。もちろんそこのすばらしい布オムツはちょびっと高価なのですが、我が子を愛するおかあさんであり、我が子に美しい地球環境を残すようなエコ的にこころがけの正しいひとであるならば、そのぐらいの出費を惜しむなんて非常なことはしないはずですよね? って雰囲気にもっていくそうです。

そんなにすごい布オムツの実物っていうのを見たことがないから、かもしれませんが、たとえ実際どんなに素晴らしいとしても、ノリが「宗教」か「洗脳」みたいでヤダなぁ、と思います。

 

ウチの旦那はメッチャひどい成人アトピーです。顔や指先、胸や背中など全身の皮膚が順番に荒れて、かゆくなったり、ひっかいて血がにじんでしまうことがあるし、ゼンソクも出ます。海のしおみずや、塩素のきつすぎるプールの水に体調の悪い時にはいると、全身「まっかっか」。入浴剤も、いろんなものはつかえません。肌着やシーツはよーく洗って生地がくたくたになったのじゃないとダメ。タオルも新しくてノリがついてたりするとダメ。湿布薬なども、あれこれダメ。けっこういろいろめんどくさい。

でも、本人あまり気に病んでない(笑)。「自分はこういうやつで、体質が生まれつきこうなんだから、しょうがない」って感じ。

動物の毛や皮膚のタンパク質など、けっこうヤバいアレルゲンになっちゃうらしいんだけど、「すべて除去なんかしきれるわけない」と、犬猫を飼い、乗馬をたのしみ、鷹匠をやってるんですからねー。

このひとはモノをためこむのも好きで、いろんなものに興味をもって道具や材料を集めるほうで、本なども読みかけなのが山ほどあって、かたづけがニガテでもあります。わたしも掃除はキライだし、モノを捨てるのがニガテなので、ウチはひどいです。メチャクチャです。

ほこりは赤ちゃんによくないから、かたづけろ!

と、実家の母は申しました。母は、わたしが産院にはいっている間に父と一緒にきてくれて、うちじゅうに掃除機をかけてくれ、ベビーベッドを組み立ててくれました。父と母ががんばったので、ウチはウチにしては比較的きれいになりました。

でも、家の中にわんこが三匹に猫が一匹いて、寝る時は「おとうさんとおかあさんと」いっしょ。何年も、それぞれのわんこが拾われた時から(ええ、みんな拾ったんです)そうしてきたから、いまさらやめるわけにもいかないし。室内の二カ所に犬トイレが、一カ所に猫カゴがあるし。おとうさんの仕事場の手前には亀が冬の間いすわっているところもあるし、二階には鷹とハヤブサがいるし……そういうすべてのイキモノが餌を食べるし、食べればだすわけで……。

そんなに清潔志向のひとじゃなくても、びびるような環境です。

わたしはわりと動物がなんでも平気でムシすらもオンナにしてはたぶんかなり平気なほうですが、でも、年に何度か、動物さんのフード関係とかのうっかり忘れてみえない陰のほうでくさったのとかにムシがわいたりして、ある日突然家の中がムシムシ大行進になったりすると、全身鳥肌の「きゃーーーーーー!」になります。さすがにそういう場合は、旦那さんも動員してなるべくきれいにするようにしますが……目にふれない、旦那さんしかいかないほう(あるんです、ウチの中に、そういう魔境が)で何が起こっているか、どんなものが発生しているか、知らないほうが心が平和でいられそうなことには立ち入らないようにしております。

赤ちゃん雑誌にも「新生児ちゃんをむかえるために、家をきれいにしておきましょう。カーテンなど、ほこりになっているので、臨月になる前に一度洗濯しておきましょう」とかってかいてあったりしますしねぇ。

夫の子なのですから、娘もアトピー体質がきっとあります。もしかして、犬毛猫毛でカユカユになったり、咳がひどかったりしたらどうしよう、食べられないものがたくさんあるような子だったらどうしよう。ちょっとおびえたのですが……どうにもなりません。かたづけられないものはかたづけられないし。飼ってる犬猫亀蛇鷹その他動物を、処分もできないしねぇ。旦那さんと別居するわけにもいかないし。

で、「ええい、ママヨ!」と、そのまま、それまでのウチのあたりまえの生活に赤ちゃんをくわえました。なにかまずいことが起こったらその時対処しよう、やってみなきゃわからん! って感じで。

おかげで寝る時はわんことぴったり隣り合わせですし、ベビーベッドの横は犬のトイレでした。しかし……彼女は、幸いにも、どうやら平気みたいです。ひどいカユカユにも、ゲホゲホにもなりません。元気いっぱいです。こないだ(生後一歳と二カ月ちょっとで)突発性発疹というこのとしごろのこどもがよくかかる病気になり、いきなり8度の熱がでましたが、そんなのはそれがはじめてで。これまでまったく風邪もひかなきゃ、おなかもほとんどこわさない、たまに癇癪をおこすけど、だいたい陽気でご機嫌さんで、ちょー丈夫な(よって扱いやすい)お子さんなのでした。

生後何カ月かしたころ、近所に小児科をさがしました。ワクチン注射を頼んだり、急な発熱とかあった時にかかりつけになってくれそうなところに、前もって、診察しておいてほしいとおもって。この先生に、オムツカブレしたり、皮膚が赤くなったり乾燥しすぎになったりなどの時につけるくすりを何種類かだしてもらってます。アトピーと肌の状態に関しては旦那のほうが圧倒的に詳しいので、お風呂あがりにどこにどのクスリをどのぐらいぬるかは旦那の担当です。

アトピーに影響があるかないか調べるために、母乳なのでハハオヤであるわたしの食生活についてすべて記録をとるよう言われましが、なにを食べてもあんまり関係ないようです。むしろ、寝不足とか、癇癪をおこしたとか、出掛けて疲れたとか、そういう時にちょっとだけ、肌の状態がわるくなったりするようでした。娘の月齢の低いうちはわたしも生卵はやめとけとか、いろいろ細かくいわれました。マヨネーズはともかく、チョコレートもあまり食べちゃいかんとか。先生すみません、半分ぐらい聞いて、半分聞き流してました。

 

赤ちゃんには清潔な環境と、きちんとした生活習慣を! 

って、たぶん、とっても正しいことなんだろうなぁ、とは思います。

でも、「完璧に清潔で、几帳面にしてないと、ダメ! イヤ!」と思うあまり、ちょっと汚したらすぐさま拭くとか、一日に何度も掃除機かけるとか、誰かがモノの位置をちょっとズラしたら「だしっぱなしにするな、もとに戻せ!」って怒鳴ってばかりとか、そういうふうだと、ちょっと気がやすまらないかなぁ、と思います。

食品添加物とか、化粧品とか、「コワイ!」とか、「こんなのは許せない!」「ぜったい認めない!」「なくさなきゃ!」とかっていうひともいるけど……あんまりいろんなものにメクジラたてると、生きていきにくいと思う。

いつもコンビニ弁当じゃこどもがカワイソウ、というのもわかる。ママの手作りのおやつって素晴らしい! もわかる。でも、料理つくったりするのものすごーくニガテでキライなひともいるしー。そういうひとは、ものすごい努力してごはんつくってストレスでへろへろになるより、ごはんは手ぬきして、そのかわり、元気で楽しい毎日をおくったらいいんじゃないかと思う。最近の市販のお弁当とかはけっこうよくできていたりするし。わたしだって、たまにマックやケンタやカップヌードルを食べたくもなる。こどもさんが、あるテイド親に隠れていろんなことするようになるまで、そういうものを「ぜんぜん食べたこともなく」育つというのも、それはそれで問題かなぁ、という気もします。虫歯を心配して、甘いものとかアイスとかを全面禁止にするの、とかもね……きっと虫歯で自分が困ったおかあさんはやりたくなるんじゃないかと思うけど。

得られるものと奪われるもののバランスが肝心だと思う。

家庭生活のルールを決める主婦の感性があまりにも過敏だと、ちょっとのことにもピリピリして、イライラして、ささいな刺激にいちいち反応しちゃう子に、なっちゃいがちなんじゃないかなぁ。

キッチンまわりとか、お風呂まわりとか、そりゃあ、あまりべとべとで汚いとよくないだろうとは思いますが。ハウスダストやカビ・ダニ・よりも、殺菌消毒剤の化学成分のほうが実はずっとからだ(や環境)に悪いんじゃないかなぁって気もします。

ウチはドイナカで、トイレがまだ浄化槽なので(つまり下水じゃない)、便器の洗浄剤がつかえません。浄化槽の生物濾過装置の中の「ぜんだま」の細菌が、薬品でやられちゃうと、正常な処理ができなくなっちゃうから。たった一家族のトイレですらそうなので、都会の人口密集地で、みんなして、強力な洗剤とか殺虫剤とかつかいまくってたら、そりゃあ水も空気も地面も、さぞかしすごいことになってるんだろうなぁと思います。

水清ければ魚住まず、と申します。地球の自然のふつーの環境というのは、さまざまなものがごった煮状態に少しずつ混ざり合った状態です。「汚染」のことを、生物学者のひととか医学関係のひととかは「こんたみ」といいますが(コンタミネーションの略)、顕微鏡レベルでまったくコンタミゼロな状態をつくりだそうとすると、ものすごーくたいへんなんですね。

自然にあり、毎日必死に掃除でもしないとすぐにふえちゃうたまっちゃう埃や微生物、ゴミには「そこそこ耐えられる」ぐらいのほうが、のちのちその子が幸福なんじゃないか、とわたしは思います。

とすると、生まれてすぐ、母親由来の免疫機能が比較的強力に働いている時には、あまり神経質になるより、むしろ「ふつーのテイドのヨゴレには、思い切りさらしたほうが」いい、という考えかたもあります。

我は海の子、の二番の歌詞を思い出してください。潮で産湯をつかう! といってます。「なんて乱暴な!」と思うおかあさんもいるかもしれませんが、海水は、いきもののゆりかご。波止場に近すぎてエンジンオイルがただよってるとか、下水の排水口が近くにあるとか! でないなら、なまじのナマミズより、ずっとキレイかもしれない。

蒸留水や純水より、「天然ミネラル水」のほうが「なんかおいしそう!」ってことがあるでしょ?

赤ちゃんも、あまり無理やり除菌だー消毒だーっていった環境より「ふつー」なほうがいいんじゃないかなぁ。 

かといって、足の踏み場もなくて、ブキゴキが何匹もいったりきたりして、もののかげでなにかが腐って踏むとぐにゃっとする……みたいな状態にしろ、というてるんではありませんぜ、もちろん!

ただ、実際、おなかにいっそサナダムシの二三匹でも飼っておいたほうが、アトピーにならないし、デブにもならない、実は健康にいいようだ、って研究あったりして……そもそも、異物を攻撃するための免疫系が過剰に過敏に反応しちゃうのが、アレルギーなので。なまじ、正しい攻撃先がなくなった免疫系が、腕がなまらないように? 攻撃しなくてもいい相手でスパーリングするのがアトピー。軍人さんが、なまじ出動がないもんだから、もてあまして、お酒なんかのんで無辜の市民を殴っちゃったりするようなもんですね。

というわけで

清潔! というのも、実は絶対的に正しいものではないんじゃないか?

とわたしは思うのです。

「一見キレイなようにみえるところ」も、ミクロなレベルでは「完全にキレイ」な状態だったりすることはまずありません。寒天培養シャーレを出しておけば、かならずなにかひっかかる。だから、ようするに、程度問題にすぎない。ゼロか100じゃない。しかもつねに変動している。はたまた、なまじ掃除機をかければかけるほど、実は、排気でバイキンをばらまいちゃうみたいなこともある。

清潔なほうが気分がいい

と思うひとは、そうすればいい。

でも

なにがなんでも清潔にしてないと落ち着かない!

は、あんましよくない、と、すみませんけど、もう断言しちゃいます。

さっき申しましたように、「完全な清潔」はふつーの環境ではありえないので(テントでもはって空気を遮断した無菌病菌とかじゃないと無理)この気持ちがどんどんとめどなくなっちゃうと、あとは、神経症までまっしぐらだからです。

清潔にしとかなきゃ意識が強すぎて強迫観念とか神経症とかになってしまったおかあさんの、朝から晩までピリピリしっぱなし! とかのほうが、なまじな泥ヨゴレより、カビより、捨て損なったゴミより、くさった野菜のニオイよりも、ずっとずっと、こどもに悪い影響をおよぼすと思います。

 

自分があまり片づけが得意じゃないのを正当化するために、ねじれた考えでそう思ってしまうのかもしれないけど、わたしは娘がかわいいからこそ、ガラスのケースにいれて無菌培養なんかしたくないなー、と思います。たとえば、山登りして、泥んこのついてしまった手をちょっとズボンでこすっただけで、オニギリをつかんで食べれて、川の水をのんで、それで別におなかもこわさないような、そんな子になってもらいたい。そう思います。そのほうが、本人、のちのち幸福なんじゃないかなぁ。

 

日本の女性あるいはおかあさんにとって、「きちんとする」「清潔にする」はすっごい大事なことで、そこを押えておかないと、女子として、ハハオヤとして、あるいは主婦として「失格」みたいなポイント、のように思われていたりする部分があるかもしれないって気もします。

実態としての清潔ではなく、印象としての清潔というか

見栄、あるいは、安心のための清潔、というか。

 

いやほんと。きちんとできるひとは、いいなー。

ビシッと片づいていて、整理整頓がゆきとどいていて、モノがなくなったりせず、必要な時にはパッと出てきて、埃のリボンも蜘蛛の巣もどこにもなく、あっちこっちに、ちょっとした花なんかが飾ってあったりするようなおうちは、ほんと、うらやましいです!

はたまた、洗練された少ない数のモノしか持たず、季節の移ろいを感じながら、こころゆたかに暮らせるひとは、ほんとうに上品だと思います。尊敬します。

でも、

わたしには無理〜。だめ〜。できない〜〜〜!

ただでさえうまくできないのに、娘がなんでもいじりたがるので、ますます混乱を極めております。床とか、低いとこにあるものは全部さわられるし。ひきだしはあけられるし。なんでもひっぱりだすし。しまってもしまってもまた出すし。まだ赤ちゃんなので、自分で片づけるほうはまったくできないんですね。でも、いろいろ、こころのオモムクままに遊びたいんですね。不器用なので、たとえば、クレヨンとか、一本だけ出すってことができなくて、いちいち12本入りの箱をふってぜんぶバラまかないとはじまらない。わたしゃここんとこ毎日目につくたびに、あっちこっちにあるクレヨンをせっせとひろいあつめております。もう何本かなくなってしまいました。

もしわたしが自分のルールで家じゅうがいつも片づいてないとガマンできないひとだったら、すごいストレスだっただろうなぁ。

クレヨンならクレヨンが、ちゃんと、12本が、正しい順番にきちんと並んでないとイヤなひとだったら、たいへんだっただろうなぁ。

と思います。

うちの子は娘なのですが、サイバラ先生の『ああ、息子』とか読むと、世の中にはほんとうに信じられないような息子さんたちがおられますからねぇ。

なんでも「だいたい」で、「おおざっぱ」で、「いいかげん」で充分だ、いちいちキチンとしなきゃなんておもったら神経たまらん、と思うわたしは、旦那にまで「豪快なハハオヤ」と呼ばれています。ゴーカイっていい用語だと思いません? 「だらしない」とか「ガサツ」とかいうより、だんぜんポジティブで(笑)。どっちにしろ、几帳面とか神経質とか完璧主義とかから、もっともはるかに遠いやつ、それがわたしです。わはははは。

だから、わたしゃすくなくとも、「脅迫商法」のカモにはならないと思います。これこれこうしないと赤ちゃんがかわいそうですとか、これこれこうじゃないと恥ずかしいですとか、どこのおかあさんもみんなやってますとか、そういうタグイのことをいわれても、いっこーにピンとこないので。なにしろ、「ふつうこうです」なんていわれると「じゃ、あたしはやめとく。みんながみんな同じなんてつまんないじゃん」と思うという、アマノジャクな性質なので。

たぶんカミサマはこんな乱暴、もとい、豪快なわたしにそだてられても大丈夫なタイプの、頑丈でへたこれない、少々のことではどうにもならない、よくデキたムスメをくださったのだろうと思います。

娘は、リアルもののけ姫に、育ちつつあります。