交感神経ばっかり鍛えてませんか? |
「受容するのがあまり得意でない」タイプのかたの、生きかたや人格を批判したり、否定したり揶揄したりするつもりはありません。この現代社会を生きていくには、きっと、そうでなければならなかったんだろうとも思います。
しかし ものごとでいちばんダイジなのは、「バランス」なんですね。
「緊張」は「弛緩」があってこそ。「臨戦態勢」は「平和のんびり」あってこそ。他のところでも言及している陰陽思想というのは、ようするにそれです。 陰陽の考えかたに則った中医学(漢方)は、人体や生活も「中庸」がベスト、と考えます。どういう方向にむけてでも「過激」「過剰」はダメなんです。「元気すぎる」のもよくない。ギンギンギラギラに精力絶倫なひとって、突然死したりするでしょう?
たとえば、温泉にはいってゆったりする……というようなこと。せっかくお湯につかっても、のぼせるばかりであまり気持ちよく汗をかけなくないですか? あるいは、汗をかいて全身がゆるむまで「こんなにダラダラお湯につかってなんかいられない、飽きてじっとしてられないし、時間ももったいないから、サッサとでて、カラオケでもしにいっちゃう」などと、つい思うとか。 最高の状態で「オン(臨戦態勢)」になることができようにするためには、本気で「オフ」もできるようになったほうがいい。そのほうが、長い目でみると、圧倒的に効率があがり、もっと、素晴らしい能力が発揮できるようになるのではないでしょうか。ゴムひもだって、バネだって、つねにひっぱりつづけていたら、だめになるのがはやいです。アクセルとブレーキも、両方いつも踏んでいたら、どっちもキキが悪くなります。 |
妊娠のメカニズムのどこかに、「母体が副交感神経優位な状態(ひらたくいうと、緊張していない状態、リラックスした状態)」であるほうがうまくいくところ、「それが望ましい」部分がある のではないか、とわたしは疑っています。 卵子と精子がめぐりあって受精卵になり、胎児になり、妊娠期間を経てぶじ出産できるようになるためには、長い時間とさまざまな段階が必要です。たとえば、「妊娠」が確認されるまでにも、こまかくわければ、次に示すような多くのステップがあります。
このいちいちが、いわば「関門」です。門がオープンになっていれば、通り抜けるのは難しくありません。しかし、いちいち入国審査みたいなことをされたり、税金をとられたり、あまつさえ、「疑わしいから、詳しくしらべる。ちょっとこっちにこい」と、怖い顔をしたひとにひきたてられていったりしたらどうでしょう? ウンザリするし、疲れるし、萎縮してしまいます。
別のイメージ。あなたが「お城のお姫さま」だとします。夢にみるステキな王子さまがいつかやってきて、結ばれるのを、心待ちにしています。たとえば、そもそも、どんなお城なら、理想の王子さまがやってきてくれると思いますか。 →強そうな兵隊がおおぜい見張っていて、みるからに手強そうな砦城? →悪い魔法使いが支配しているような、ブキミな怪物がでそうなお城? →旅人を歓迎してくれると評判の、庭や建物がとても美しいお城?
高度治療をなさっているかたのブログや日記、掲示板などを見ると、「なんてせっぱつまった日々を送っているんだろう!」と感じます。神経の張りつめ具合、すり減り具合が、へんなたとえかもしれませんが、超難関校の受験生みたいになるのではないかと思います。毎日のように試験があり、採点され、成績がつき、「合格可能性」をシビアにつきつけられる、落第や不合格の恐怖にさらされている……みたいな感じで。 とある知人は、もともとつきあいのいいひとなのに、治療を最優先で生活しているため、信じられないほど忙しいようです。集まりに誘っても、なかなか参加できません。その余裕がない。体温や超音波検査などの具合で予定が微妙に動くため、ドタキャンも頻繁です。お医者さんに「様子を見ましょう」と言われれば、様子を見ることになった期間の間中、「よくないことがおこりませんように」と、薄氷を踏むような心境にもなるでしょう。起き抜けの基礎体温の数値から、あらゆる検査、治療、投薬、などなどのデータに、がんばがらめになる。数値に、追求され、糾弾され、「もっとがんばれ」と叱咤されるかのような気になるのではないでしょうか。ぶじ妊娠にこぎつけるまで、緊張と落胆、失望しては、「でも、次こそきっと!」と期待して、祈って……という日々がつづくのではないでしょうか。 こんな状態で、リラックスしろといっても、そんなの、とても無理です! 交換神経ばかりがバリバリに緊張し、副交感神経にはなかなか出番がない、そんな毎日になってしまうでしょう。 ほんとうに過酷です。わたしのような弱虫には、到底耐えられそうにありません。そんな日々をがんばっていらっしゃるみなさんは、ほんとうにスゴイ! えらい! でも……すみません、否定に聞こえてしまったらこまるのですが、 「そうやって、超人的な努力と克己心でがんばりつづけていることって、もしかして、交換神経をますます優位にしてしまっていませんかー?」 あなたのステキなお城に、トゲトゲの鉄条網を巻き付けたり、何万個もの対人地雷をうめこんだり、赤外線探知システムをそなえつけてしまっていませんかー? せっかく近くまできてくれたやさしそうな王子さまを、「セキュリティ」の名目で、はねのけてませんかー? |
以前『コウノトリを待ちながら〜不妊治療のための竹内久美子入門』というのを書きました。そのラストに、「ダメな奥さんになりましょう」と書きました。ふざけてると思われたかもしれませんが、これ、大まじめです。すごく大事なことなんですよ。
他の提案は受け入れられないとおっしゃるかたも、これだけは、ぜひ、実践してみてくださいね! ほんと、お願いしますよ。
妊娠したいなら、「いい奥さん」でいてはいけません。 家事というものはほんとうにエンドレス、毎日かならずあり、無限にあります。炊事、洗濯、掃除、ゴミ出し、ご近所づきあい……すべて立派にきちんとしたいなんて思ったらたいへん。気のやすまるヒマなんてありません。気がやすまらないと、交換神経が優位になってしまって、妊娠に不向きです。だから、家事とかそんなもんは「できるだけほったらかし」にしましょう。どうせやってもやってもきりがないんです。あなたがやらなければ、惨状をみかねて、きっと誰かがかわりにやってくれます。やってくれないなら、やってー、やってよー、と、ダダッコのように頼みましょう。おカネがあるなら、ハウスキーパーさんをやとってもらってください。自分がやらなければならないものをサボッているなどと、罪悪感を持つ必要はありません。まったくありません。なぜなら、あなたはもっと大事なシゴトに従事しているからです。出産準備という、他にかわってくれるひとがいないシゴトに。
女王蜂は出産しかしません。
他のことはみんな、はたらきバチさんとか、兵隊バチさんとかがやってくれます。エサあつめも、身の回りのかたづけも、敵の攻撃をゲキタイするのも、女王バチ自体の健康管理も、みんなみんな。喜んで(かどうかわかりませんが)その他おおぜいのハチさんたちが、引き受けてくれます。女王バチは、ただ、デーンとかまえて、リラックスして、ローヤルミルクをいただいて、おーきくおーきくおーきくなって、たっぷり孕んで、じゃんじゃん産む、それだけ。それだけです。 それだけをするのが、女王バチの存在理由。 子孫をつくるというのは、それほどまでに重要なこと!
ぜひとも妊娠しよう、妊娠したい、と思うなら、どうです、いちど
女王バチになってみては?
旦那さまはじめ、ご実家のかたがたなどに「ちょっとわたし、しばらく、女王バチになるから、協力してよ」とおっしゃっては? そこはほら、女王さまですから、けっして低姿勢に頼むとかじゃなくて、「ってことにしたから、よきにはからえ!」と、高飛車ぎみに、宣言なければそれでよろしいかと。だって女王さまだもん。 いったん女王になると決めたら、女王がするべきじゃないことに、チョコマカ手をだしちゃだめですよ。気がついたら「ちょっと、ダメじゃない! 誰かなんとかして!」とお怒りになっていいです。お皿洗うとか、トイレットペーパーとりかえるとか、靴みがくとか。そんなの女王のしごとじゃないです。しばらく鍛えれば、きっと、あなたが「チッ」と不機嫌そうに舌をならすだけで、誰かがサッと解決してくれるようになるでしょう。女王ぷりが、ますますあがりますね! 着心地のいいガウンでも着て、好きな飲み物を誰かに命じてもってこさせて、好きなDVDでもかけて、「どーん」とラクチンな姿勢で、のんびりしましょう。そのような生活をしばらくつづけていると、きっと、女王フェロモンがでてくるんじゃないかと思います。すると、旦那さんが、クラクラーっときて、ふらふらーっと寄ってくるかもしれないので、そしたら、めんどくさいかもしれませんが、させてあげましょう(そこで目的を見失ってはいけません。女王生活の最終的な目的は、たのしい生殖、ゆたかな繁殖です)。ただし、こっちからは、あまりなにもしないように。あくまでウケミでね。ドーンとかまえて。だってほら、女王バチはからだがおおきすぎて、機敏には動けないんものでしょ? 女王陛下のご懐妊を衷心よりお祈りいたしますです。
|