交感神経ばっかり鍛えてませんか?

 

「受容するのがあまり得意でない」タイプのかたの、生きかたや人格を批判したり、否定したり揶揄したりするつもりはありません。この現代社会を生きていくには、きっと、そうでなければならなかったんだろうとも思います。

しかし

ものごとでいちばんダイジなのは、「バランス」なんですね。

 

「緊張」は「弛緩」があってこそ。「臨戦態勢」は「平和のんびり」あってこそ。他のところでも言及している陰陽思想というのは、ようするにそれです。

陰陽の考えかたに則った中医学(漢方)は、人体や生活も「中庸」がベスト、と考えます。どういう方向にむけてでも「過激」「過剰」はダメなんです。「元気すぎる」のもよくない。ギンギンギラギラに精力絶倫なひとって、突然死したりするでしょう?

そういう点からすると、酷ないいかたになってしまったらすみませんが、「がんばりすぎ」「根性にたよりすぎ」「自分にきびしすぎ」も、やはり、ダメのうちにはいってしまうんですね。


具体的にいうと、「受容が苦手」のひとはほとんどの場合、交感神経優位に身体が慣れてしまって、副交感神経がきかなくなっている。いわゆる「自律神経」が狂って「リラックス」することが苦手になる。


からだやこころを「のんびり」オフにするのが、苦手じゃないですか? 

たとえば、温泉にはいってゆったりする……というようなこと。せっかくお湯につかっても、のぼせるばかりであまり気持ちよく汗をかけなくないですか? あるいは、汗をかいて全身がゆるむまで「こんなにダラダラお湯につかってなんかいられない、飽きてじっとしてられないし、時間ももったいないから、サッサとでて、カラオケでもしにいっちゃう」などと、つい思うとか。

そういう生活をつづけると、どうなるかというと、長い年月かけて、本人のもってうまれた体質の「いちばん弱い部分」に悪影響がたまります。胃腸が弱いひとは胃腸に。腰とか首とか腕とかの神経のイタミにきたり、いきなり、心臓とか、脳とかにとりかえしのつかない出血をおこしたり(おどかしてごめんなさい)。

リラックスするのが苦手のひとは、リラックスしようとしても、「さぁリラックスするぞ!」とリキんでしまって、ぜんぜんリラックスできなかったりします。
そもそも日本人は働きモノで「なんにもしない」が苦手なひとが多いほうなようですけれども。

最高の状態で「オン(臨戦態勢)」になることができようにするためには、本気で「オフ」もできるようになったほうがいい。そのほうが、長い目でみると、圧倒的に効率があがり、もっと、素晴らしい能力が発揮できるようになるのではないでしょうか。ゴムひもだって、バネだって、つねにひっぱりつづけていたら、だめになるのがはやいです。アクセルとブレーキも、両方いつも踏んでいたら、どっちもキキが悪くなります。

 

 

妊娠のメカニズムのどこかに、「母体が副交感神経優位な状態(ひらたくいうと、緊張していない状態、リラックスした状態)」であるほうがうまくいくところ、「それが望ましい」部分がある のではないか、とわたしは疑っています。

卵子と精子がめぐりあって受精卵になり、胎児になり、妊娠期間を経てぶじ出産できるようになるためには、長い時間とさまざまな段階が必要です。たとえば、「妊娠」が確認されるまでにも、こまかくわければ、次に示すような多くのステップがあります。

 

卵子が目覚める
排卵
卵子が卵管で待っている(数日間?)
膣内に精子がはいる
精子が子宮を通りぬけ卵子と出会う
受精
受精卵が子宮内膜まですすんでいく
着床

胎芽の成長

                ・
                ・
                ・

このいちいちが、いわば「関門」です。門がオープンになっていれば、通り抜けるのは難しくありません。しかし、いちいち入国審査みたいなことをされたり、税金をとられたり、あまつさえ、「疑わしいから、詳しくしらべる。ちょっとこっちにこい」と、怖い顔をしたひとにひきたてられていったりしたらどうでしょう? ウンザリするし、疲れるし、萎縮してしまいます。

 

別のイメージ。あなたが「お城のお姫さま」だとします。夢にみるステキな王子さまがいつかやってきて、結ばれるのを、心待ちにしています。たとえば、そもそも、どんなお城なら、理想の王子さまがやってきてくれると思いますか。

  →強そうな兵隊がおおぜい見張っていて、みるからに手強そうな砦城?

  →悪い魔法使いが支配しているような、ブキミな怪物がでそうなお城?

  →旅人を歓迎してくれると評判の、庭や建物がとても美しいお城? 

 

 

高度治療をなさっているかたのブログや日記、掲示板などを見ると、「なんてせっぱつまった日々を送っているんだろう!」と感じます。神経の張りつめ具合、すり減り具合が、へんなたとえかもしれませんが、超難関校の受験生みたいになるのではないかと思います。毎日のように試験があり、採点され、成績がつき、「合格可能性」をシビアにつきつけられる、落第や不合格の恐怖にさらされている……みたいな感じで。

とある知人は、もともとつきあいのいいひとなのに、治療を最優先で生活しているため、信じられないほど忙しいようです。集まりに誘っても、なかなか参加できません。その余裕がない。体温や超音波検査などの具合で予定が微妙に動くため、ドタキャンも頻繁です。お医者さんに「様子を見ましょう」と言われれば、様子を見ることになった期間の間中、「よくないことがおこりませんように」と、薄氷を踏むような心境にもなるでしょう。起き抜けの基礎体温の数値から、あらゆる検査、治療、投薬、などなどのデータに、がんばがらめになる。数値に、追求され、糾弾され、「もっとがんばれ」と叱咤されるかのような気になるのではないでしょうか。ぶじ妊娠にこぎつけるまで、緊張と落胆、失望しては、「でも、次こそきっと!」と期待して、祈って……という日々がつづくのではないでしょうか。

こんな状態で、リラックスしろといっても、そんなの、とても無理です!

交換神経ばかりがバリバリに緊張し、副交感神経にはなかなか出番がない、そんな毎日になってしまうでしょう。

ほんとうに過酷です。わたしのような弱虫には、到底耐えられそうにありません。そんな日々をがんばっていらっしゃるみなさんは、ほんとうにスゴイ!

えらい!

でも……すみません、否定に聞こえてしまったらこまるのですが、

「そうやって、超人的な努力と克己心でがんばりつづけていることって、もしかして、交換神経をますます優位にしてしまっていませんかー?」

あなたのステキなお城に、トゲトゲの鉄条網を巻き付けたり、何万個もの対人地雷をうめこんだり、赤外線探知システムをそなえつけてしまっていませんかー? せっかく近くまできてくれたやさしそうな王子さまを、「セキュリティ」の名目で、はねのけてませんかー?

 

以前『コウノトリを待ちながら〜不妊治療のための竹内久美子入門』というのを書きました。そのラストに、「ダメな奥さんになりましょう」と書きました。ふざけてると思われたかもしれませんが、これ、大まじめです。すごく大事なことなんですよ。

他の提案は受け入れられないとおっしゃるかたも、これだけは、ぜひ、実践してみてくださいね! ほんと、お願いしますよ。

 

妊娠したいなら、「いい奥さん」でいてはいけません。

家事というものはほんとうにエンドレス、毎日かならずあり、無限にあります。炊事、洗濯、掃除、ゴミ出し、ご近所づきあい……すべて立派にきちんとしたいなんて思ったらたいへん。気のやすまるヒマなんてありません。気がやすまらないと、交換神経が優位になってしまって、妊娠に不向きです。だから、家事とかそんなもんは「できるだけほったらかし」にしましょう。どうせやってもやってもきりがないんです。あなたがやらなければ、惨状をみかねて、きっと誰かがかわりにやってくれます。やってくれないなら、やってー、やってよー、と、ダダッコのように頼みましょう。おカネがあるなら、ハウスキーパーさんをやとってもらってください。自分がやらなければならないものをサボッているなどと、罪悪感を持つ必要はありません。まったくありません。なぜなら、あなたはもっと大事なシゴトに従事しているからです。出産準備という、他にかわってくれるひとがいないシゴトに。

 

女王蜂は出産しかしません。

 

他のことはみんな、はたらきバチさんとか、兵隊バチさんとかがやってくれます。エサあつめも、身の回りのかたづけも、敵の攻撃をゲキタイするのも、女王バチ自体の健康管理も、みんなみんな。喜んで(かどうかわかりませんが)その他おおぜいのハチさんたちが、引き受けてくれます。女王バチは、ただ、デーンとかまえて、リラックスして、ローヤルミルクをいただいて、おーきくおーきくおーきくなって、たっぷり孕んで、じゃんじゃん産む、それだけ。それだけです。

それだけをするのが、女王バチの存在理由。

子孫をつくるというのは、それほどまでに重要なこと!

 

ぜひとも妊娠しよう、妊娠したい、と思うなら、どうです、いちど

 

女王バチになってみては?

 

旦那さまはじめ、ご実家のかたがたなどに「ちょっとわたし、しばらく、女王バチになるから、協力してよ」とおっしゃっては? そこはほら、女王さまですから、けっして低姿勢に頼むとかじゃなくて、「ってことにしたから、よきにはからえ!」と、高飛車ぎみに、宣言なければそれでよろしいかと。だって女王さまだもん。

いったん女王になると決めたら、女王がするべきじゃないことに、チョコマカ手をだしちゃだめですよ。気がついたら「ちょっと、ダメじゃない! 誰かなんとかして!」とお怒りになっていいです。お皿洗うとか、トイレットペーパーとりかえるとか、靴みがくとか。そんなの女王のしごとじゃないです。しばらく鍛えれば、きっと、あなたが「チッ」と不機嫌そうに舌をならすだけで、誰かがサッと解決してくれるようになるでしょう。女王ぷりが、ますますあがりますね!

着心地のいいガウンでも着て、好きな飲み物を誰かに命じてもってこさせて、好きなDVDでもかけて、「どーん」とラクチンな姿勢で、のんびりしましょう。そのような生活をしばらくつづけていると、きっと、女王フェロモンがでてくるんじゃないかと思います。すると、旦那さんが、クラクラーっときて、ふらふらーっと寄ってくるかもしれないので、そしたら、めんどくさいかもしれませんが、させてあげましょう(そこで目的を見失ってはいけません。女王生活の最終的な目的は、たのしい生殖、ゆたかな繁殖です)。ただし、こっちからは、あまりなにもしないように。あくまでウケミでね。ドーンとかまえて。だってほら、女王バチはからだがおおきすぎて、機敏には動けないんものでしょ? 

女王陛下のご懐妊を衷心よりお祈りいたしますです。