不妊治療のための竹内久美子入門
クミサオリ編
欲しいのになかなかコドモができなかった頃、竹内久美子さんの著作の数々は、読むとなんだか気持ちが落ち込んでくるものであった。 なぜなら、竹内本にはときどき、「これこれこういう場合は妊娠しやすい」というような記述があるのだが、それが、自分たち夫婦がどうもまったくあてはまらないのである。別に竹内さんはわたしたちを責めているわけでもとがめているわけでもないし、実のところ人間についての話をかいているとは限らないのだが、読むとつい「そうか、だからデキないんだ」……と、グレたくなってしまったりする。 好きなひとの過去とか、人間、いちばん知りたいことは同時にできれば一生知りたくない、知らないですめばそれにこしたことがないことでもある。真実は苦く、おりおり耳に痛い。特に、知ったからって今更どうしようもないことは、知らないですんでたほうが楽だったりもする。 しかし! 敵を知りおのれを知れば百戦あやうからず、ともいう。 なかなかデキないこどもをさずかるためならば、背に腹はかえられん、どんな情報でもとにかく聞かせろ〜! なヒトにとっては、驚くほどにタカラの山だぞ竹内久美子。 竹内本はみな面白いから、精神的・時間的・金銭的に余裕があるなら、必要だと思うみなさまが各自でちゃんと揃えて全部はじめからさいごまで通しで読んでいただきたい。それが正しい態度だし、ほんとうの理解のもとでもあろう。 が、この際、「不妊治療のための竹内久美子入門・クミサオリ篇」をあえて、恣意的にまとめてみる。あるいはご本人や竹内ファンには「ええっ、なぜそうなるんだ?」「そんな読み方は邪道だ!」と言われてしまうところがあるかもしれないが、「こういう理解・利用のしかたももしかするとアリかもしれない」一例なのだと思っていただきたい。 不妊治療も長くなると、赤ん坊を妊娠するためならどんなことだってやるぞ〜!
足裏診断も信じるし、紅茶キノコだって飲む!
みたいな気持ちになったりする。イワシの頭も信心から、という。 「もしかしたら御利益があるかも」しれないし、ないかもしれない。 以下、数々の竹内本を久美沙織が解読して、「ここがポイントだ!」と思ったところを、なるべく簡潔にとりだして、列記していく。 信じろ、とはわたしは言わない。参考にして、あくまで自分で考えてみて欲しい。もしかしたら、そんなことならちょっとやってみようかしらと思うのもあるかもしれない。やってみたら、結果どうだったか、知らせていただけると嬉しい。
一見ふつーに見えるとしても、もしや体脂肪率が「隠れ肥満」レベルになっていないかどうかを確認せよ。 特にウエストにくびれがないのはマズイ。なにがなんでも筋肉つけて絞って、ウエスト対バスト比が70対100ぐらい(バストが85センチぐらいなら、ウエストは50センチ代じゃなきゃヤバイ!)になるように鍛えなくてはならない。それが女体が「受胎率」がもっとも高くなる状態なのだそうだ。藤原紀香もしくはマリリン・モンロー状態が「理想的」であるそーだ。 人類はその歴史上長い年月ほとんど狩猟採集生活をしてきたわけでつまり「飢餓状態」であった。生物としてのヒトは受胎可能年齢になるやいなや繁殖するのが普通。つまり、「性的にじゅうぶんに成熟して」骨っぽく未成熟なこどものカラダから「健康でオンナらしい」からだにうつりかわるその時期、オンナっぽくなったとたんに(受胎のチャンスがあれば)速攻待ったなしすぐに素早く限りなくすなおに妊娠するようにできているのである。 よって、そのような状態にオノレを近づけることが大切なのだ。 痩せよう。体脂肪率を減らそう。ウエストを絞ろう。すると、あーら不思議、妊娠する。 もしかすると「そもそも男をひっかける」のにも、すごく有効かもしれない。 [実例] たまたまであるが、わたしは妊娠する直前「体脂肪率」を「適性」にするのに熱中していたのだった。計画的な食事と運動と代謝をあげる努力でなんとかこの年齢なら適性のうちに入る27パーセント以下に戻すことに成功した、そのとたんにアッという間に妊娠したといってもいい。告白する。それまでは実は「隠れ肥満」だったのだ。30インチのジーンズを履いて座業をするとみょーに足が痺れたり腰がいたくなったりするので、おかしいなぁと思って測ってみたらアッチョンプリケだったのである。 ちなみに、身長156センチ、もっとも痩せていた頃の体重は38キロ(二十代中ぐらいの頃)、当時は体脂肪率計をもっていなかったのでその頃の体脂肪率はあいにくながら不明だが、体力はなく、胃下垂で腰痛もちで貧血ぎみだった。もっとも痩せていたときのジーンズサイズは22。結婚したら知らぬうちにぶくぶく太って、体重で50キロ、体脂肪率で30を越えてしまった。妊娠直前は38キロ当時よりむしろ健康で筋肉質で、代謝が高かったと思う。 注意事項 ただし! 「いままさにがんばってどんどん痩せている」ときには、なんと!
残念ながら、むしろ妊娠しにくいらしい。脂肪を削りおとしている真っ最中は、いわば「飢えている状態」なわけで、そんなときに妊娠すると胎児が育たないから、身体としてはあまり妊娠したがらないのである。 ほどよくちょうどよくぴったりいい具合に痩せているところから「すこしだけ緩みだした時、太りだしたとき」にこそ、もっとも受胎しやすいのだ。 もしかすると「少し太って」もいいほどの余裕を得るためには、かなり強烈に痩せなければならないかもしれないが、とにかくこの際気合をいれて、おとせるところまでおとしてみよう。あまりに体脂肪率が高いひとは、まずはじっくり時間をかけてダイエットしてみごとな「ボッ・キュッ・ボン」体型になってから、繁殖のことを考えよう。 そんなの納得できない、すんなり妊娠してしまった親戚やともだちをみてもみんなそんなにプロポーションがよくなんかないもの! ……とあなたは反論したかもしれない。おせんべかなんかかじりながら。 たしかに。妊娠しやすいひとは、ガリガリでも、おデブでも妊娠する。春でも秋でも妊娠する。年子でも妊娠するし、高齢でも妊娠する。だが、「条件がよほどよくないと」なかなか妊娠できないタイプも数の中にはいるのだ。あなたはそういう注文のうるさいゼータクもんなタイプなのに違いない。 妊娠したい! という強烈な動機がひとつ増えることで、ナイスバディーが手にはいるチャンスが増えるのだから、この際苦しくても努力してほしい。たとえ妊娠がうまくいかなくても、人生かわるぞ、きっと。
できれば数日間、片方が(なるべくなら女性が)ひとりで、あるいは、誰か、彼ではないトモダチといっしょにでもいい、はるか遠くのほうにまで旅行などしてしまうこと。いつもいつもズルズルべったりいっしょで安心こいてる彼と、時間も距離もあけて、遠く離れて、とにかくしばらく「遠い状態」どうしても会えない状態を作る。演出する。 「彼なし」「彼ぬき」で、さまざまな新しい体験をし、とびきりハッピーで愉しい思いをすること。うんとたっぷり。帰ってきたあなたに彼氏がいきなり「そーゆー気分」をもよおして、みょーにセッセとなにかをしたがったりしたら、大成功である。 あえない時間が愛そだてるのさ、とヒロミゴーもいった。 珍しくおいてきぼりにされてしまった彼は、とにかくあなたとはやく「し」たくてたまらなくなっているだろう! たとえば住まいと事務所や商店がいっしょになっている「職住接近」状態などで、ほんまに一年三百六十五日しかも24時間ほとんどずーっといっしょにいたりすると、カップルは、恋人同士あるいは夫婦というよりは、「肉親」になってしまう。「兄妹」のように。あるいは「母と息子」のように。すると、(あなたと彼がお互いのことをどう思っていようと)精子や卵子は「この相手には新鮮味がない」「こんな相手とはがんばって、繁殖してもしょうがない」「ていうか、だって近親相姦はヤバイじゃん」と思ってしまって、いまいちちゃんと繁殖力を発揮しないらしいのである! だから、「距離を離せばいい」といっても、しょっちゅう出掛けるようなところにちょっとばっかゴマカシでいったぐらいでは、残念ながら意味がない。 しばらく実家にかえってきます、っていうのも、もしかするとアリだが、これまでにもしょっちゅうやっているとしたらもう効果ないんですみませんけど。 雑誌かテレビ番組ででもみつけた「是非いってみたい気分になったところ」に仲良しのオンナともだちと出掛けよう! (いや男ともだちでもいいけどさ)その際には、ヘソクリを全部つかいきるぐらいのつもりで、パァッとやろう。ケチケチ旅行ではなく、大散財すること。こんな贅沢うまれてはじめて! というぐらいのゴージャス体験をして、ストレスを解消しよう。そして、出先では、なるべく多くの時間、彼のこととかシゴトのこととかはスコンと忘れておく。とにかく、気持ちいいこと愉しいこと美味しいことをたくさんしましょう。 [実例] 私自身、仲良しの藤臣柊子と熊本方面に温泉などをめぐる旅行にいってそれはそれは愉しかったのは例の本にも書いた通り。前後の東京泊をいれれば、思えば五泊六日もダンナとはなればなれになった。そんなことはとても久しぶりだった。
前の2ともちょびっと近いが、この際、「子孫繁栄のため」と割り切って、後腐れのなさそうなひととウワキしてしまいましょう。 芸能人にでも夢中になって必死のおっかけをするだけで役立つ場合もあるかもしれないし、実際の性的行為まで体験してみないことには効かないひともいるだろうが。 もちろん実行を伴う場合にはウワキ相手には行為の最初からゲンミツにコンドームをつかわせること(でないとウワキ相手のこどものほうを妊娠してしまうから。いやそれでもいいというなら止めないが……いまどきは血液型どころかDNA鑑定しちゃうから、間違いなくあとでバレるぞ?)。 大切なことは、よーくウワキをしてきたら「その刺激が薄れないうちに」本来繁殖したいほうとも、ちゃんときっちり忘れず(笑)交接すること。 「ありえない」相手とのふれあいは女性に刺激をあたえ、排卵をうながすんだそーだ。生殖器官が活発化したところで交接すれば、それまでなかなかアタらなかった、いまいち元気のないカレシの精子でも、ぶじに大当たりする可能性が高くなるのである。 動物のなかには、交尾刺激によってはじめて排卵する種もぎょーさんある。人間だって、 [実例] わたしは藤臣をこころのそこから愛している。残念ながら(?)まだ肉体関係はないのだが、彼女といるとほんとうに幸福だと思う。こんなに大好きでいっしょにいて愉しいオンナともだちがいてくれるなら、もしかしてダンナがいなくなっちゃっても生きていけるなぁ、寂しくないなぁ、と旅行中ちょびっと思ったりもした。はたまた、熊本という土地もすっかり気にいって、ここに住めたらそれもいいなぁ、またきっと来ようなぁ、などと思ったりした。 ほとんど浮気みたいなもんである。つか本気なんだけど。
ひぇぇぇ、マジですか〜、いや、そうなんです、残念ながらマジなんですわ。こればっかりはあなた自身にはどうしようもない。旦那さんに、よーくよーくたのみましょう。「レイプ」してくれと。 できれば、きっちり変装して、旦那さんだということがそう簡単にはわからないようにしてもらったほうがいいし、さらに、ふだんとはガラッと違う性的傾向を示してもらうことができれば非常に有効であったりするらしい。その結果夫婦の信頼関係に回復不能な亀裂が生じる可能性もあるが、のんべんだらりと「いつもの夫婦生活」をしているよりは圧倒的に受胎率があがる、そのことだけはたしかなのだ。 サトルの化け物(テレパシーができて、相手が次になにをしようとしているかいちいちわかってしまうから無敵だという怪物)とたたかうときに「なにも考えないようにしよう」としても、どうしてもついつい何かと考えてしまう……って話ではないが、あなたのほうが「どうせ、彼の演技だもんね♪」と事前に知っててしまっていたのでは、残念ながら意味がない。マジ本気でイヤがっているところを無理やり力付くでされねばならない。 すげー怖いかもしれないし、不愉快かもしれないが、妊娠する。少なくともその確率はあがる。 正直いってこんなこと書くのはわたしはものすごくイヤである。むかつく。腹立つ。もしレイプされそうになったら、相手を殺し自分も殺される覚悟でぜったい抵抗してやるもんね! と思うほうだから。だが、レイプによる受胎率つーのは、ほんま、なんでこんなに? と思うほど異様に高いんである。ぜったいに認めたくないが理性ある女本人の精神状態はどうであれ、遺伝子はレイプされたがっている。「利己的な遺伝子」という呼び名が実にぴったりくることに、遺伝子のほうとしては『イヤよイヤよも好きのうち』であるらしい。 逆のいいかたをすると(ますますこんなこといいたくないが)女がリーダーシップを発揮したり、主導権を握ったりしていると、妊娠しにくいのだ! だから、まぁレイプというのが不穏当だとしたら、
たとえば、「今日から三日間はバッチリ排卵日だから、この三日は、なにがなんでもはやく帰ってきて、うんとがんばって何度もエッチしてね!」などと旦那さんを拘束したり、山芋だのウナギだのなんかそういう「精力つきます関係」なゴハンを出したりしてウフフと笑ったりすると、 できるもんもできなくなる(勃つもんもたたなくなるかもしれないし) であるというのが事実であるらしい。男子ってなー、ずいぶんとナイーヴなもんじゃな(がっははは)。 だから、もしもあなたがそういうことあしていたとしたら、そーゆーのをとにかく一度「やめてみる」のをおすすめする。 遠くの不妊外来までいっしょうけんめい通い、待合室でさんざん待ちくたびれてストレスをかけ、しかもお医者になんだかんだネチこく注意をされ、お高いホルモン注射だのなんだのをやる。そういうのも、いってみれば「女子が主導権を握って」必死に妊娠しようとしている状態である。 ずっとそうしてきてダメだったら、それも、一度「スッパリやめてみる」のも手だと思う。つまり女子が主導権を放りだすのが。 マカを飲んだり、ジンセンをのませたり、ネットでさがした子宝温泉に次々にでかけてみたり、セックスのあとには腰まくらをいれて三十分間じっとしていたり、事後思い切り逆立ちをしたり…… これまでいいといわれたこと、ともだちが「わたしはそれで妊娠したんだよ」といったのでマネしてみていることなどなど。きっとあなたもワラにもすがる思いでいろいろとやってみたでしょ? あなたの考えで。あたの判断で。 だから、それ、全部「やめる」。 なぜなら、「あなたがきめたこと」だから。「女子が主導権を握っているうちは妊娠しにくい」から。 ムッとしたひとが多いかもしれないが、「不妊治療をやめたとたんに妊娠する」ひとが多い、っていうの、きいたことありません?
これもまた数字が示している「事実」なのだ。 「なにがなんでも」「いますぐにも」「とにかくはやく」妊娠したい! そう激しく思い込み、自分で自分にプレッシャーをかけることが、あなたの卵子をずたぼろにし、彼の精子どもを不貞腐れさせる、どうもそういうものらしい。 ……とはいっても、またしてもサトルのバケモノで、なまじ「意識しない」ようにすればするほどヒシヒシひりひり感じてしまうのが人情というものなのである。これはほんまに難しいかもしれない。 だったらせめて「あー、もう、やめた!」と口にだしていうこと。いったことばを耳で聞くと、意外に説得されてしまうものである。 少なくとも「いま、いま、なにがなんでもいま」と思わないように。 明日だっていいじゃん。来年だっていいじゃん。そんなに焦って、必死になって、はやくはやくって、あわてなくても大丈夫だよ。あせってもしかたない。のんびりしよう。 お姑さんなどガイヤが、あまりにもヤイヤイいうるさかったら 「どうしても妊娠しなきゃしなきゃとあんまり強く思えば思うほど、よくないんだそうです。だから、もう、そうやってプレッシャーかけないでください、お願いします」 とたのむこと。あるいは、「そうやってプレッシャーかけられるからデキないんです!」と逆ギレしてみせること。 デキない嫁ならいらないから離婚する、といわれたら、いっそ離婚してみることにするとそのとたんにデキるかもしれない。いやマジで。 [実例] ほんと、妊娠した時って、不思議とそーゆーことぜんっぜん忘れてた。あとできいたら、旦那はわたしの排卵日をいちおう意識して「今日やるとデキるかもしれない」と思ってなさったそうですが、わたしゃ、もうぜんぜんまったく、そーじゃなかったです。
陰陽でいえば、女は「イン」男が「ヨー」。古来、男のほうが「積極的」で女は「受動的」なもんだといわれてきた。 が、男女平等で機会均等化な世の中、いまどきの女子はそこらの男子より「よほど男前」だったりすることが少なくない。 ところがだ。悔しいなぁ。ちくしょう。 妊娠といういたって生物的なことがらには、どーもそれが弊害というか障害というかカベになっているらしいのである。 男はんはデリケートでナイーブ。とっても繊細で傷つきやすい。まして精子っつーやつはまったくもうほんとうに根性なしで、自分よりも卵子のほうが強い、エライ、すごい、つまり、奥さんとか彼女とかのほうが「ずっと凛々しい」「しっかりしてる」「頼れる」かも……なんて思ってしまうと、「デキるもんがデキなく」なるらしいのだ! あーうざい。やーねー。 でも、 おんなたるもの、なにがなんでも妊娠してやろうと企むなら、ここは戦略的に「負けるが勝ち」。 思い切りヨワヨワしくなって、受動的になって、ドジでヘマでマヌケなダメなやつ……でもそこが可愛いやつ……になって、ナイーブでデリケートな精子さんや男子さんを 「きみって、なんにもできない可愛いダメ子ちゃんなんだね。ぼくがついててあげなくちゃ」 と、勘違いさせなきゃならんのである。 受動的になるとは、「責任をとらない」ことでもある。 「あなたまかせ、風まかせ」で生きていくことである。 長年シュフをしてきたとすると、あなたはきっと手配のプロだと思う。家事の大半はやってもやってもキリがない。それでも、暮らしがなりたつよう、予測をたて、やらなきゃならないことがらをギリギリうまく間に合うようにまわしていくのがシュフである。 しかし。それで妊娠できなかたったのなら。そして、どうしても妊娠したいなら。ここで心を入れ替えて、 このうえもなくダメな奥さんになりましょう! たとえば。 おなかがすいたら、もうひとりがどうであるか、あとからどういうことになるかなどは一切気にせず、自分だけなにかそこらにあるものをテキトーにつまむ。懇願されないうちから、ひとの食事の面倒などみてはいけません。買い置きもしない。あらかじめ気をつかったりしない。トイレットペーパーがもうすぐなくなってしまいそうだとしても、気にしない。お風呂をわかしておかなきゃとか、明日が燃えないゴミの日だとか、光熱費の引き落としがいつだとか、そういうことはですね、とにかく一切合切気にしない。はじめはきっと、いろんなことに気がまわってしまって、「次から次へ」どんどん手をまわしてしまうだろうが、心をオニにして、それをやめる。 するときちんとした日常はたちまちメチャクチャになるでしょうが、なんとしても妊娠するためです、ガマンしましょう(笑)。 立派なシュフがいなくなったって、生活っつーのは、どうにかなるもんです。 部屋がちらかっていようが、洗濯物が干しっぱなしだろうが、ゴミがたまってくさくなろうが、気にしなきゃいい。なんとかなります。 食べ物でも、ティッシュペイパーなどのストックでも、なくなったらなくなってからどうにかすればいい。ちなみにどうにかするのは、あなたではありません。誰かべつのひとです。 仕事から帰ってきて疲れ切っている旦那さん、かもしれません。 でも、そういうのを背負わされてはじめて、旦那さんは「こいつは俺がいないとダメなんだ」と思えるかもしれない。こいつの人生はオレの手のなかにある、生殺与奪の権利はオレにある! そう心のそこから感じてはじめて、旦那さんの精子さんが「よーしこいつにオレのコダネをしこむぞう!」とはりきってくれるかもしれないのです。 だからあなたのほうとしては、 「まーいいやー」「ないならないで、すまそー」と、とにかく思い切りダラダラしてください。多少不便でも、死にはしません。不便は、先にがまんできなくなったほうの負けです。 あなたは強い意志をもって、あくまでグズグズ・ダラダラし、ただワガママにおのれの欲望のままにいきあたりばったりにその場しのぎな暮らしを暮らすこと。旦那さんが腹をたてようが、文句をいおうが、申し訳ないとか思わないこと。 ごめんねぇ、そのうちやるからぁ とかなんとかいってごまかしておけばよろしい。 自分からいろんな方面に気をまわしたり、先々の予測をたてたり、積極的に行動したりしてはいけません。そういうことをするから妊娠しないんです。そういうのは本来「わかいメス」の、つまり「妊娠するのが役目である個体」の担当することじゃないんです。 家庭生活や日常を守るのは、あなたではない誰かであるべきなのです。 女王蜂をみよ。なんにもしない。ただ生きて生殖しているだけでしょ。 生殖というのはそれぐらい困難で重大で、たいへんなことなのです。あなたはただそれのみに専念すばいい。他のことはぜんぶ「余計なこと」「あなたが負担する必要のないこと」なのです。 徹底的に自己保存本能だけで生きてみましょう。 そして、オンナ道「受動」をきわめましょう。 するときっとフェロモン出ます。なにしろ「家事とか、ひとのためになることとか、いっさいしない、ただ、セックスしかできない女」
そのフェロモンにオスが吸いよせられて来る時、あなたがニンゲンなどという頭でっかちな存在ではなくひたすら単純なセイブツのひとつとなって、きわめて動物的に交接する時、きっと、あなたのお中には待望のお子さんが宿るに違いありません。
『浮気人類進化論』晶文社 1988年 『そんなバカな! 遺伝子と神について』 1991年3月 文藝春秋 『賭博と国家と男と女』1992年8月 『小さな悪魔の背中の窪み――血液型・病気・恋愛の真実――』 1994年4月 新潮社 『パラサイト日本人論 ウィルスがつくった日本のこころ』 1995年9月 『BC! な話』 新潮社 1997年3月 『三人目の子にご用心! 男は睾丸、女は産み分け』 文藝春秋 1998年8月 『シンメトリーな男』 平成十四年九月 新潮文庫 |
||||||||