猫にまたたび波多野に動物(ダイスケのこと)

 

 ある日のこと。波多野鷹あての緊急の手紙が届きました。

 ひどい怪我をしているノラの子猫を見つけ、ほうっておけずに病院に連れて行ったのだが、重症のため、一ケ月もの入院加療を必要とした。このたびようやく退院することになったが、貰ってくれるひとが見つからない。実は、うちには、既に一匹猫がいて、ワタシは大学受験に再チャレンジしているところなゆえ、もう一匹飼ってくれろとは、言い出しにくい。親が迷惑しているので悪いのである。子猫は、元気ではあるが、右の後ろ足が潰れていて、はっきり言ってまだ血が出てる。利口で可愛い、ひとなつっこい男の子なのだが……波多野先生は、動物好きで人後に落ちぬかたのはず、哀れな子猫をなんとか引き取ってはくれまいか?

 手紙は神戸からでした。

 波多野先生はすぐに電話をかけました。

「貰う。貰うけど、でも、神戸まで取りに行くのは無理だ。うちまで届けてくれるんなら、貰ってあげる」

 ちょっと高飛車になっているのは他でもない。うちは、あの、チャイとプーイを拾っちゃったばっかりで、目まぐるしい子育ての日々だったのであえます。手紙の主には罪はないとはいえ、どこかで誰かがまた猫を捨てたらしいことに、波多野先生、やっぱりどうしても腹がたちます。それで、ちょっと、意地悪ないいかたになってしまうのでありました。

 後から聞いた話では。手紙のヌシは(浪人中だと言うのに)あれこれ苦労して、手配してみたんだそうです。日通のペリカンさんも、カンガルーのせーのも、黒猫ヤマトの宅急便すら、ほんものの猫の配達はしてくれないみたい。航空便の止めおき制度はあるけれど、先方はともかく、うちの近所には空港がありません。最も近い松本空港に行くにも、4時間ぐらいかかります。往復なら、その二倍なわけです。遠い。あまりにも遠すぎる。

「持ってゆきます」とうとう、彼女は言いました。「父が車を出してくれることになりました。あたしが自分で、ダイスケを(彼女は既に猫に名前をつけてあげていた)、持って行きますから……どうぞよろしくお願いします!」

 

 貰うと決めてしまったら、なんだかだんだん嬉しくなります。

 そうして、彼女のいっしょうけんめいが、ビシビシ伝わってきます。

 受入れ側はひそひそ相談をしました。

「あんまり露骨に嬉しそうな顔をするのはよそうね。彼女は、やっぱり、離れ難いのかもしれないんだから」

「ああ。どんな猫かなぁ。可愛いかなぁ」

「マーちゃん(マーロゥ。既存の猫。メス)と仲よくできるかな」

「チャイとプーともうまく行ってくれないと困るよね」

 

 その日。わたしたちは、いつになくきれいに家の中を掃除し、わくわく弾む胸を押し殺しながら、待っておりました。ピンポーン。

 ダイスケを見たとたん、わたしと波多野はアッと顔を見合せてしまいました。

 白黒ブチ猫。……マーちゃんそっくり! マーちゃんより黒の割合が大きいけど。ほんとに、そっくり! 親子みたい・

 持って来てくれたのはご両親でした。彼女は来られませんでした。なんでも、早くダイスケを届けたい一心で内緒にしていたが、実はこの日、模試があるんだと言うことを、最近になって告白されたのだそうです。そんなら、代りに行ってきてやるから。そうして、お父さんとお母さんは、は〜るばる来たぜ神戸から〜、電車をいっぱい乗り継いで、猫篭抱えて。

 彼女の手紙の感じから、ひとり娘が浪人なんてしちゃって、相当に頭に来てる、キビシイご両親を想像してたのですが、そんなこと、全然なかった。とっても暖かくて、愉しいご家族みたいで、あたしたちはすっかり嬉しくなってしまいました。こんなご家族に大事にしてもらってた猫が、いい猫じゃないわけがないからです。

 ダイスケは、ごりんごりんに痩せていて、後足の傷が悲惨でした。骨が変形して、指が一本足りなくなっています。犬にでも齧られたのかと思っていましたが、どうやら、どこか溝に落ちるか、何か重いものに挟まれるか何かして、無理やり引っ張って脱出した時に、自分で自分を怪我させたもののようです。しっぽの先も曲ってて、二センチばかり、まるハダカ。なまじしっぽ全体が黒いだけに、ピンクの肉色が見えているのは、すごく痛そうで(はっきりいって、少々卑猥でもあり)、ついつい目をそらしたくなっちゃうような感じでした。

 でも、目はでっかいし、耳もピンと立ってるし、顔だちや全身の感じがとてもキリッとしています。そんな大怪我をしたハンディなんて、モノともしてないって頼もしい様子でした。波多野先生が急遽こしらえたTAGボックスの猫箱(マーちゃんや小犬たちに、イタズラされないように、天井を台所壁かけ用のワイヤーネットでフタしてあります)に抱き入れると、みーみーみー、トーンは超音波まであと一歩みたいに高いけれど、とてもしっかりした声で泣きました。

 こんな可愛い猫を下さった上に、神戸の(神戸って、お菓子がおしゃれで美味しいので有名ですよね)クッキーまで持ってきてくださったご両親と、しばらくお話をしました。春になって、彼女が志望の大学に受かったら、きっと今度はお三人で泊りに来てくださいねってお約束しました。

 お父さんは、社長さんでした。神戸の社長さん! まるでCLASSYの世界だ。カッコいいよなぁ。彼女も、実は、お嬢様なのかもしれない。機会があったら、ぜひ、神戸にも遊びに行きますので、よろしく、なんて言って、電車の時間があったので、急いでお帰りになりました。神戸←→軽井沢、片道ならともかく、往復運転はしんどい。やっぱりクルマはやめになったのでした。

 

 その日のうちに、ツチヤ先生のところに連れて行きました。ついこの間、拾ってしまった小犬を連れてって、予防注射や検査をしてもらったばっかりです。

「うわぁ。今度は猫ですか」

 ツチヤ先生は明らかにあきれて笑っておられました。神戸の獣医さんからの申し送りを報告し、怪我の具合を見てもらいました。

「ずいぶん小さいですねぇ。2ケ月齢くらいかな。まぁ、ここまで直っていれば、怪我そのものはそう心配はいらないでしょう。栄養のあるものを食べさせて、様子を見てみましょう。入院中に何か病気をもらってるといけないから、一週間くらいはマーちゃんのそばに行かせないように」

 

 ダイスケは、長いこと電車に揺られ、さらに車で運ばれたりした割には、最初っから、ほんとうに元気で、ヤンチャで、なつっこい奴でした。見知らぬ奴らが触っても抱き上げても、そんなに抵抗しません。マーちゃんなんて、はじめ、誰が近づいても、ファーッって化け猫の顔をして、暴れて暴れて大変だったそうです。こいつは、そんなに臆病じゃない、たぶん、人間にいじめられたことがないんだろう、人間のこと、好きなんだろう。そんな感じを持ちました。

 特別リッチに、たっぷりと人間用の肉を(安いやつですけど)料理した奴なんかを食べさせていたら、ダイスケはどんどん元気になって、とても箱から出たがりました。ただ、猫ですから、変なトコがあると、つい嘗めちゃう。足の怪我に、けっかくカサブタがかかっても、やたらに嘗めてしまうので、なかなか血が止りません。

 一週間立ちました。まだ血は止ってなかったけど、狭いところでストレスかけるより……と、出してみることにしました。

 とりあえず、篭の中に入ってるマーちゃんに、近づけてご挨拶。

 さぁ、出るぞ、猫キック! 猫噛み! 猫だまし!(おおっ舞の海!) 

 新参のチビに、マーちゃんの怒りが、爆発するぞう!

「……ふぁぁぁ」

「みーみーみーみーみー!」

「……う……うそっ! なごんでる。全然怒ってない? あの凶悪マーちゃんが、優しい顔してながめてるっ!」

「いやぁ。ネオテニーって奴ですね。やっぱ、子猫には攻撃本能が抑制されるんです」

 

 かくて。ダイスケはマーちゃんと、無事に一緒になりました。誰が見ても親子です。なんたって、そっくりなんですから。ひとつお皿から、ゴハンも食べます。ダイスケは、それが癖なのか、ゴハンを食べる時、ぐるぐるぐるぐる唸ってしまうんだけど、そうやって唸りながら食べてるダイスケの横で、マーちゃんは、じーっと座って待ってます。ダイスケがお腹いっぱいになって、ヨソに遊びに行ってしまうまで、邪魔せずに、食べるのを待っているのです。

 ダイスケは、だんだんずうずうしくなりました。居眠してるマーちゃんに、いきなりプロレスごっこをしかけます。後足で立ち上がって揉み合うふたりは、まるで、草原で抱き合うプレーリー・ドックちゃんの家族みたい。すっごく可愛い。すっごく愉快。そのうち、マーちゃんはプンとして、どっか行っちゃいますが、ダイスケに致命的になりそうな攻撃は、ただの一度もしたことありません。一度、たぶん、まだ加減のわからなかったダイスケに噛まれたのでしょう、耳に傷を作ったこともありましたが、それでも、ダイスケに仕返しはしなかったのです。

「ヒニン猫のマーちゃんにも、母の愛ってのがあるんだろうか」

「まぁ、このひともトシとって、丸くなってましたからね。もっと若い時だったら、こううまく行ったかどうか」

 

 ダイスケは頭は白黒ですが、肩から尾までは、ほとんど真黒です。ピンとまっすぐに尻尾をたてて、ちょこちょこ走ってく姿は、ちょうど、ロンパースを来た赤ちゃんみたい。真黒い中に、ピンク色の星ひとつ。コウモンってものが、あんなに可愛いなんて、ヘンタイみたいですが……ほんとーに可愛いんだもん。

 

 子供の頃、大好きだった絵本に『びりっかすの子猫』と言うのがありました(あったと思うんだけど……別の題だったかもしれない……)。自分で持ってた本じゃなくって、幼稚園か、小学校か、誰かトモダチの家にあったんだと思う。確か、兄弟の中で、いちばん小さくて、いちばんのろまで、いちばんおバカな、でも、だからそれがうーんと可愛いって、猫の話だったと思う。うちは、ママもおばあちゃんもネコ嫌いで(なんだか、不気味で怖いって言うんですよね。それでも、ママはうちに来た時、いっしょうけんめいマーちゃんの機嫌とってくれてたけど)猫の本さえ、買ってちょうだいって言いにくかったぐらいで(子供の本って、高かったですよね。小心者のワタシは、毎年、誕生日やクリスマスまで、是非とも欲しい本を決めるのに、考えに考えてドキドキしてたもんです。だから、オトナのひとから、図書券もらったりすると、ほんとうに嬉しかったです)ほんものなんて、飼ったことなかったし、飼えると思ってなかった。猫と一緒に暮せるようになるなんて、波多野さんとつきあうまで、思ってもみなかったけど。

 あんまり好きだったので、『びりっかすの子猫の歌』を作りました(わたしは子供の頃から、嬉しいことや悲しいことや、誰かによびかけたいことがあると、すぐ歌を作り、大声で歌うという、おめでたいクセを持っております。今でも『お風呂ができたよの歌・・ふろっこブーちゃん・・』だの『原稿があがった、ああシアワセの歌』だの、日頃使ってるものがあります。ファミコンのマリオに夢中になってた時には、あの電子音のBGMにあわせて、いい加減な歌詞で歌いながら戦っていたものです。『♪イーカーちゃん、るるるるるるる、あっちいーってーー、そばに来なーいでー、ほーっとーいてぇ』とかなんとか。小説家にならなかったら、NHKこどもミュージカルに出演するひとになりたかったです)。

 『びりっかすの子猫の歌』は、こうです。

 

   ♪ びりっかすの子猫は 

     びりっかすの子猫で

     びりっびりのびりっかすで 

     歩いて行った

     やぁっぱり びりっかすで 

     歩いて行ったとさ 

     トララララン

 

 ついでに紹介すると、『チャイとプーのお散歩の歌』はこうです。

 

   ♪ まねっこプー、元気なチャイ

     ふたりは仲良しきょうだいだ

     まねっこプー、元気なチャイ

     喧嘩をしないで 歩こうね

 

 その後出来た『チャイとプーお散歩の歌パート2』はこうです。

 

   ♪ ちびらは散歩が大好きさ

     お外はとっても いい気持ち

     雨の降る日も風の日も

     散歩がなくっちゃ はじまらない

     散歩が 散歩が

     ちびらは散歩が大好きさ

     散歩が 散歩が

     ちびらは散歩が大好きさ!

 

 この歌には2番があって、それは、ベッドの歌です。

 

   ♪ ちびらはベッドが大好きさ

     ふかふかおふとん いい気持ち

     お昼寝 お夜寝 盗み寝も

     ベッドがなくっちゃ はじまらない

     ベッドが……(以下略)

 

 どうも歩く関係の歌詞が多いのは、それを歌いながらわたしが歩いてるからに他ならないよなぁ。

 ええと、話は大回りしましたが。

 その『びりっかすの子猫』を、ダイスケは突然、思い出させてくれたのでした。確か、絵本の猫は黒猫で、まっくろくろのキキみたいな奴だったけど。のろまのあまり、きょうだいにごはんを取られてばっかで、ゴリンゴリンに痩せてる絵だったと思うの。そんで、ダイスケって、その頃はまだ、サシ毛が多くって、黒の中にところどころ灰色が混じってるのが、まるで、ゴミでもついてるみたいで、妙に汚可愛くって、そこんとこも、絵本のけばだった感じの痩せ猫にそっくりだったの。

 あんなに大好きだった『びりっかすの子猫』を、選んだんじゃなく、またしても(偶然拾ってしまった小犬の時同様)誰かがくれた、なんて、なんだか、じーんとしてしまいました。

 そんで、その絵本も本屋さんで捜してみたんだけど、みつからなんだ。ひょっとすると『びりっかす』というコトバが、サベツ用語にでもひっかかっちゃったのでしょうか。読者のひとで、誰かゆくえを知ってるひと、あるいは、持ってるけど、もうそんなにいらないやってひとがあったら、どうかどうか、ひとこと、教えてくださいませ。恐怖『びりっかすの子猫の歌』アカペラ・カセットと交換で、くれないかなぁ。だめかなぁ。

 

 さて、うちの床は木なので(絨緞にしておくと、犬猫が沮喪した時に大変だと言うので、わざわざそうしておいた波多野先生の慧眼!)まだ爪を引っ込められない子猫は、ツルツル滑ってしまいます。まして後足の変形のせいで、ダイスケはちょっと普通でない走りかたをします。あんまり勢いよく走ると、ダイスケはドリフトして、お尻が流れてって、しまいには真横むいて、スピンして転んでしまいます。そして、びっくりしたような、バツの悪いような顔して、それから、しらんぷりして、またどっか行っちゃいます。

 

 犬たちとダイスケも仲良しです。犬たちは(プーがまねっこなので)割と二匹一緒に行動しちゃうので、最初、ちーさい猫と、そろそろ育ってきた犬二匹じゃあ、危ないんじゃないかと思ってたけど。

 連続写真をごらんください。

(注・写真ほんとはあります。あるはずです。ただしデジカメ画像ではなく、かみやきのものなので、そのうち、できればスキャンしてみていだたけるようにしたいと思います。いまはすみません。とりあえず文章でお楽しみください)

 一枚目。この猫の恐怖と苦痛の表情。今にも引き裂かれてしまいそうです。こわいですね。危ないですね。それをほっといて写真撮ってるのは、どこの誰なんでしょうね。

 二枚目。犬たちは、突然ボールに引かれて、猫を忘れてしまいました。ダイスケの、こんどの表情をごらん下さい。『あ〜ら、もう終わりなのぉ? つまんないの』ですね。

 

 ダイスケは、洗濯機のようにブンブンと唸ります。これが、いわゆる『ごろごろ』喉を鳴らすって奴なんでしょうか? はじめて聞いたよう。

 マーちゃんは『ごろごろ』をやりません。波多野先生が言うには、あんまり小さい時にお母さんと離れ離れになったので、喉を鳴らすやりかたをならわなかったのかもしれないということです。だから、最初、ダイスケがブンブン言い出した時には、とても驚きました。ダイスケはブンブンいいながら、台所に立ってるわたしの足にワキバラをコスコスして行きます。それから、てん、と仰向けになって、遊んでくれろのポーズをします。足の先でつんつくつついてやると、爪を立てます。バカヤロウ。

 ダイスケは網戸に昇ります。テラスにやって来る、コガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、ゴジュウカラなんかに、飛びかかろうとでもしているんでしょうか。網戸が壊れると困るので、チュッと水をかけます。

 ダイスケはジュウサンボンセンヂリスのりーとすーが大好きです。りーとすーが巣箱から出てると、すぐそばに座って、いつまででもじーっと見つめています。りーやすーは慣れたもんで、どうせ網ごしには猫は何にもできないってわかってますから、平気で、ヒマワリを齧ったり、ウンチをしたりしてます。ダイスケは、ビクターのワンちゃんの首かしげポーズで、じーっと見てます。その尻尾の先が、時々、パタパタ揺れています。

 ダイスケは犬のチャイとプーイも大好きです。彼等がまだサークルに入っていた時(その後、ジャンプして越えるようになってしまったので、取り外してしまいましたが)わざわざ攀じ登って、遊んでもらいに行きました。入るのはいいんです、邪魔する奴いませんから。犬さんたちがお昼寝してたりすればなおさら。出るのが大変です。不自由な足でいっしょうけんめい昇ろうとしてるのに、チャイとプーが抱きついたり、あま噛みしたりして、引きずり降ろします。お昼寝をさまされてしまった犬たちは、飽きるまでダイスケを離しません。ダイスケはブンブン唸りながら、犬さんたちから目を離さず、円弧を描いて走ります。まるで忍者みたいです。ブンブン唸りながら、犬さんのゴハンを食べます。水を飲みます。犬さんたちは、呆れたような顔で、黙っています。

 ダイスケはおふとんも大好きです。おとなしく寝ちゃってるんだったら、それでもいいけど、そこに寝てるひとの耳元でブンブン唸ります。さらには、髪の毛をひっぱったり、脇腹に脇腹をくっつけてくすぐったりします。うっかり滑り落ちそうになった時、たまたまふとんの外に出ていたワタシの足に爪を立てます。バカヤロウ。

 ダイスケは物を落とします。マーちゃんはおとなだから、テーブルの上で寝てたって、何にも落としませんが、そこにダイスケが加わって、プロレスになると、ついついやっぱり、物を落とします。ダイスケが落とした物を、犬がくわえて持って行って、バラバラにします。このあいだはわたしの愛用のケシゴムがなくなったと思ったら、ベッドの上に、カケラになって、点々と散らばっていました。また、小鳥の餌袋を、犬猫共同作業でぶちまかして、家じゅう砂浜のようにしてしまったりもします。うちの動物たちは、ほんとうに仲良しです。絶対に壊して欲しくないものは、キチンとどこかにしまっておかなければなりません。

 

 ダイスケも、ずいぶん大きくなって来ました。パッと見、マーちゃんと区別ができないくらい、ますますそっくりになって来ました。最初、2ケ月と思ったのは、栄養がよくなかったからで、ほんとはもうちょっと大きいのかもしれないと言われています。でも鳴き声は違います。男の子だからかな。それとも、やっぱり若いからかな。

 ワルサの度合いが、どんどんましてます。いたずらざかりです。でも、それが、とんでもなく可愛いです。

 このあいだダイスケは、あたしの足に、おしっこをスプレーしました。

 そろそろタマを取ってやらないと、家じゅうにやることになるでしょう。ヒニン猫のマーちゃんを犯されても困るし。

 

 ダイスケはライオンのように歩きます。妙に威張った歩きかたに見えるのはどうしてなんだろうと観察をしてみると、なんと、前足と後足と、同じ側のを出すんだよね。やってみてください。そうすると、肩の骨が、ぐりんぐりんとうごきます。

「なんしょんなら、われ」

「どついたろか、われ」

「ナンボのもんじゃ、われ」

 の歩きかたです。さすが神戸出身……って言うとまずいかなぁ。

 

 ダイスケをもともと拾ってくれたミキさんには(そう、このひとは、うちのオシュートメさんと同じ名前だったの)時々、写真つきでお手紙を出したりしました。見違えるほど大きくなっちゃったけど、ダイスケはまだ、ミキさんのこと覚えているかしら。春になって、彼女が、ぶじ志望の大学に合格して、遊びに来てくれるのが愉しみです。

[後記]

 その後神戸にはあの地震が起こったのです。あのご一家がどうなったのか、すごく気にかかっていたのですが、始末の悪いわたしはご住所をなくしてしまっていて連絡ができませんでした。

 ダイスケは昨年身罷りました。その話はわん4にゃん3の補足のところに書きました。