お産入院中

出産のために入院する時に持っていくべきものについては、産院がきっとプリントでも寄越してこまかく指示してくれることであろうかと思う。わたしが出産したところでは『お産セット』はおっきなビニールの手提げにはいっていた。なかみは分娩時に着る使い捨ての手術着、ナプキン各種(超巨大なのと、それよりはちょっと小さいの、とか)、個別包装の清浄綿二種類、T字帯、など。授乳用品一式、赤ちゃんの服、赤ちゃんが敷いたりかけたりするバスタオルなどは入院中は産院所属のものを借りて使うようになっていた。問題はその他、あくまで自分で用意しなければならないものである。家族などが毎日様子をみにきてくれるのなら、入院時に持っていかなければならないのは「入院当日とその翌日」ぐらいにいるものぐらいで、あとは、そのつど気がついたものを頼めば良い。また、洗濯の必要なものが出ても、持ってかえって始末してもらえば良い。入院患者に洗濯機を貸して使わせてくれるところもなくはないようだが、乾燥まで素早く終るようなものとは限らない。洗って干して乾くのをまって……とやると、それなりに時間がかかる。現実的にはほとんど洗い替えは間に合わないので、たかが五日間の入院でも、同一アイテムがすくなくとも三枚、へたすると「入院する日数分」あったほうが便利だ、などということになってしまうのが、ちょっと口惜しいところだ。

入院用下着 オマタのところが綿ファスナー(マジックテープ)のついているサニタリーショーツみたいなものを用意しろといわれる。はげしく破水したり出血したりしてヨゴレてしまうかもしれないと思えばそれなりに替えもないと不安である。「たった一回か、二回かそこら」しか着ることがないのに、以後使い道がない。モノがモノなだけに難しいが、親しい関係で「よくお洗濯してあれば平気」と感じる同士なら、譲り譲られするといいと思う。ちなみに帝王切開の場合は、前も開くようになっていたりするのが便利であるらしい。

入院用パジャマ 産後用というのはネグリジェみたいな膝ぐらいまで長さのまである上着に、ゴムで腹囲を調節できるようになっているズボン、という組み合わせ。上着にしかけがあって授乳がこっそりできるようになっていたりもする。断言する。「一生一度のことだから(ウエディングドレスみたいに)」わざわざそのために作られたものをぜひとも着てみたいのでなかったら、いりません。ふつーのローングTシャツとか、上着が長めの部屋着とかで十分です。 ★ 入院なさった部屋が個室かどうか、お見舞いのひとがじゃんじゃんくるかどうかで、「へんなかっこは見せられない」度がどのぐらいあるかはそのひとそれぞれだと思いますが……誰か気をつかわなきゃならない相手が訊ねてきてくれるなら、くる時、きそうな時だけ、ちょっと「それらしいカッコ」をすればいいと思います。はたまた、産院の冷暖房が、あなたの日頃生活している空間と似てるか似てないかどう違うかとかも重要です。入院中は、ほとんどいちんちじゅう、朝も晩もそれ着てることになるわけですよ。「ふだん」しているカッコに近いほうがらくです。落ち着きます。安眠できます。そうでなくても、産後はもう即刻、赤ちゃんの世話という「これまで全然知らなかったこと」がはじまるわけです。その時、なんか着なれない、着心地のわるいもの着てたら、イヤでしょ? はたまた、たかが母乳をあげるんでも、最初は、フォームがきまりません(笑)。赤ちゃんもあなたも初心者なので、どうしたらいいかわかんないし。新生児ちゃんはぐにゃぐにゃでたよりなく、吸いつく力もしがみつく力もまだ弱々しい。うまくいっているかどうか、目で確認したい場合、「こっそり授乳」窓なんかあったら、まどろっこしくてなりません。大きな声ではいえませんが、わたしは最初、上半身はだかになってあげてました。

 

馬蹄形クッション 買っておいてよかった、持ってきておいてよかったアイテムの産後ナンバーワンです。 名称はいろいろ、かたちもU字型の太いのとか、Cの字型のいかついのとか、三日月型みたいなのとか、いろいろですが。基本的には授乳する時、ママがからだにハメてつかうものです。膝の上に直接ではなく、クッションの上に赤ちゃんが載るので、重みが分散して疲れません。まして腕で抱っこなんかしていたら、両手がふさがっちゃいます。このクッションがあれば、両手があきます! 
あんまり便利なのでわたしは三つ買いました。うちじゅうのあっちこっちにおいてあります。いまでも、コレの上にムスメを横向きにし、オッパイをあげながら、キーボードをぱたぱた入力したりするのに毎日つかっております。ムスメもムスメで、パイが欲しくなると、このクッションを持ってやってきます。たいへんわかりやすいです。 ★ お産の時にへんなところにちょっと傷ができたりした場合には、たいらなところには痛くて座れません。このテのクッションがあると、いたいところがさわらないようにして座ることができます。また、ベッドの背もたれなどにあてがって、寄っ掛かるのにも使えます。 ★ 赤ちゃんはミルクをこぼしたりするので、カバーがはずせて洗えるようになっているのがオススメです。

 

適当なブラシと髪のスプレーとか美容液とか 分娩台の上で七転八倒をやると、髪の毛がめちゃくちゃになります。汗をかいて暴れてもつれて乾いてからまって、産後すぐはお風呂になんかはいれないので、最低でも一日ほどは放置するわけで。縮毛だったりすると、これはもう、言語道断にからまります。海水浴がえりに匹敵するぐらいからまりました。やっとシャワーを許可してもらったあと、産院のシャワーブースそなえつけのシャンプーを泡立てて、すっかりからまってボンバー状態になっている髪がまるでほどけなくなっているのがわかったとたん「しまった」と思いましたが、時すでにおそし……。しょうがないので、手櫛で、ひとたばひとたば、時間をかけてもつれをときましたよ。疲れました。天然パーマやくせっ毛の強いひとは、ふだんおつかいのヘアケア製品のうち、最悪にもつれた時になんとかするのの助けになりそうな品々を、入院セットの中にいれておかれることを強烈にオススメします。さもなかったら、坊主刈りに近く、かりこんでおくことです。

退院用のウエア 入院すればいつかは退院。それまで産院のを借りてきていた赤ちゃんがこの時はじめて「自分の」お洋服を着ることになったりします。お宮参りとかのセレモニーをちゃんとやる気でおられるなら、それもんのフリフリヒラヒラドレスとかをご用意なさっておられるかもしれません。そんなに何回も着るチャンスないですから、退院の時も(ちょっと大きすぎるかもしれないけど)着せちゃいましょう。でも、赤ちゃんにとっては産院をでて「そと」に出るうまれてはじめてのチャンス。寒い季節・地方であればあるほど、防寒をこころがけないとなりません。なにしろまだ小さいので、バスタオルやおくるみでくるんじゃえば、そのしたになにを着てるかなんてほとんど見えません。ということは逆にいえば、そんなにがんばって準備しておいても、あんまり張り合いがないかもしれないということです。 ★ 生まれるまで性別を確認していなかったりすると、なまじピンクやブルーだと「ちがった」時にちょっと困る(気にしないならそれでもいいですが)。新生児サイズのお洋服のうちにひとつは、白か黄色のそこそこきちんとしたツーウェイオール(用語とベビー服のかたちはベビーの項目のほうですこし説明します)を用意しておくといいですね。といっても……新生児サイズ! これが未経験者にはわからない。ぜんぜんピンとこないんだなぁ。小さいです。ものすごく小さいです。想像を絶して小さいです。 ウチの子の予定日は三月で、ウチのほうではまだ寒いはずだったので、わたしは真っ白のフェイクファーのフードにうさぎさんのみみつきのお洋服(ほとんど着ぐるみみたいなもんです)を用意しておりました。それがまぁデカくて! 中で泳いでました。あまりにゆるゆるで抱っこに危険だったぐらい……でも、うまれたてのベビーでもおっきい子もいますからねぇ。

退院用のママのウエア 退院するときというと記念写真とかも撮ることがまぁ多いと予測されるわけで、ママとしては、ベビーちゃんを抱っこして、誇らしげに美しく写真におさまりたいところ。お腹がひっこむはずだからとつい、妊娠前のお気に入りなんかひっぱりだしてきちゃいますが、残念ながら産み落としたからといって即座に妊娠前の体型にもどったりはいたしません。臨月のフルサイズよりはそりゃー赤ちゃんと胎盤の分小さくなっているでしょうが、まだまだそんなに小さくない、特に、こう申してはなんですが、ウエストサイズのあたりには甘い考えの着たいを裏切るものがあったりします。よって、うんと痩せないとはいらないお洋服はやめておかれたほうがよろしい。はたまた、出産の時にさるあたりに問題が発生したり、帝王切開をしちゃったりなんかしてたりしますと、からだに「なおりきらない傷」があるわけで、ヨボヨボ……というのはいいすぎとしても、ヨロヨロ、みたいな状態になりがちでございます。寄せてあげて系のきつきつブラジャーとか、ぴたっとくるパンツとか、シャキッと姿勢正しくしてないとカッコよく見えない服とかは、まだ、無理、でございます。自重なさいますように。どのぐらい痩せるかわからないので、まぁ、ウエストがそんなにしぼってないデザインのワンピースとか、ゴムウエストのパンツにチュニックとか、そこらへんが無難かと存じます。 ★  ちなみに、親しいおともだちが産院にお見舞いに持っていくプレゼントとして、産婦さんに喜ばれる率が高いのが「メイク用品セット」だとか。突然のきざしであわてて入院してしまって持ってゆくのを忘れ、入院中は顔色などを確認するためメイク禁止がふつうですから忘れていた、さぁ退院ということになってあわてて旦那さんに「テキトーにもってきて」とたのんでも、山ほどあるアイテムのどれとどれが必須なのか男性にはよくわからないですからね。ほんとうにテキトーにもってこられると、必要なもんがぜんぜんなかったり。この点、ナカヨシのおんなともだちですと最小限度は「お粉と、眉ライナーと、マスカラと、リップ」とか、あなたの好きなブランドのその時の流行のものをちゃんと見つけてきてくれたりするんじゃないでしょうか。

 

大事なことを書き忘れるところだった! 自家用車で退院する場合、その時点でもう『チャイルドシート』が必要になる。チャイルドシートを使わずに赤ちゃんを乗せると法律違反である。人生最初の第一歩にいきなり法を犯させるのもどうかと思う。ちゃんと用意してあげて欲しい。さもなかったら、タクシーなどを利用しよう。

チャイルドシート 国内で比較的手軽に手にはいるもののうち、現時点でもっとも信頼できるブランドはTAKATA。 JAFが市販のさまざまな車種にくっつけてやってみた衝突実験テストの結果もそうだったし、ネット上でのアンケート結果などもそうだった。その理由の詳細は運転もできないし理系にも弱いわたしには実はちんぷんかんぷんだったが、たとえば某有名ブランド二社の製品は残念ながらどれもこれもイザという時にちょっと物足りない、という結果が出ていた。クルマや機械工学に詳しい(そしてこどもの生命安全を真剣に考える)おとうさんたちが断言していたので、信じることにした。 ★ちなみにTAKATA以外だと、レカロなんかもいいらしい。ポルシェのシートをつくってる会社である。高級品である。ヤナセがベンツ・ブランドのために輸入しているシリーズもいけるらしい。このへんとか、参考にしてください。 ★  妊婦ざっしなどによく広告をだしている某ブランドは、わたしが出産する頃、生後すぐの赤ちゃんはなるべく平らなところに寝かさないといかん、というキャンペーンを張っていた。他社のシートとちがってウチのは「ほとんどまったいら」にちゃんとなりまっせ、というのである。わたしがイエローハットでみつけた格安のおよそ三年前の型のTAKATAは、実にシンプルでよくできていてたいへん素晴らしいのだが、できるかぎり新生児向き状態にしてもまったいらになんかならなかった。こんなところに寝かしたらウチの子にはそれが原因で重篤な脳疾患が生じてしまうのではないかと不安になったりもしたが、結果からいうと、大丈夫だったらしい。 ★ ちなみに「赤ちゃん」の時期から、おとなのシートに以降するまで「ずっと長いことつかえる」ものなんてありはしない。耐久性の問題ではなく、規格の問題だ。赤ちゃん→こどもの体格の変化はあまりにも大きい。どこかの時点でまず買い換えになる。ちなみにこどもさんには、こんなのとかもある。ひとさまのクルマにのせてもらう機会が多くなると、こういうほうが実用的で便利かもしれない。だから、おおざっぱにいえば、「新生児から二歳ぐらいまでの赤ちゃんにもっとも適した形状のもの」にするか、「新生児時期はいまいちでも、すこし大きくなってからから四歳ごろまで適したもの」にするかを選択するのが妥当ではないだろうか。もちろん、こどもさんごとに体格は違う。一歳でもエッというように大きな子もいるし、ちいさな四歳もいる。おたくのベビーがどうなるかは育ててみないとわからない。  ★  ひとつ、いえるのは、「新生児は、あまり外出しない」ということ。まして遠出はしないだろう。退院時に産院から家までかえったら、次は「一週間検診」そしてその次が「一カ月検診」なのではないか。もしも体調が非常に悪かったら救急車で移動するかもしれないし、そもそも退院しないかもしれない。はたまた、そんなこどもを乗せてじぶんで冷静に運転できるか? そんな時はタクシーをたのんで抱いていかないか? というわけでチャイルドシートは、「新生児の時」に最適であるよりは、むしろ、生後半年ぐらいの、そろそろだんだんお出かけが多くなってくる頃からに適しているほうがよいのではないかというのが、まぁ、平均的な考えかたになるだろう。  ★  ちなみに! 里帰り出産というやつもある。お里が現住所からどのぐらい遠いかにもよるが、生後一カ月以内に移動するのは「ちょっとたいへん」だ。ママひとりではたぶん無理である。ご実家の父上あるいは母上などの運転の自家用車に乗せる場合でも、もちろん、チャイルドシートは必須である。自身の子育ての頃にはチャイルドシートというものが義務でなかった世代は「なーに、おまえが抱いていけばいい。ちょっとぐらいかまわんだろう」と言いがちだが、断固として、つけてもらいましょう。万が一のことがあってからでは遅すぎます。