ペットと赤ちゃん・つづき

立ち会い分娩の時、犬もつれてきていいかどうか

それが産院の「両親教室」で、なにかご質問はありませんかといわれた時に、とてもとても質問したかったんだけど、いちおう自粛した、うちの旦那の質問事項でした。

「いいわけないじゃん! 訊くまでもないでしょう」とわたし。

「なんで」

「だって、分娩室だよ? そもそも、旦那さん以外はご遠慮ください、その旦那さんも、両親教室をちゃんと受講したひとじゃないと認められないから、って書いてあったじゃん。犬は受講できません。だから、だめです」

「けどさぁ」と、ふくれる旦那。「いまどきは、犬が家の中で同居生活おくってるとこ、少なくないと思うよ。ほら、スーパーの駐車場とかでも、クルマにのっけてつれてきてもらってる犬さんに、よくあうじゃん? 

おかあさんが入院して……

いきなりいなくなって、何日かして、やっと帰って来てくれたと思ったら、なんかへんなちっこいのをつれてきてる……なんて、犬にしてみればショックだよ。赤ちゃんにおかあさんをとられたと思って、怒るかもしれない。

けど、分娩シーンをみせれば、動物どうし、ああそうか、そういうことなのか、って、一発で納得すると思うね」

旦那のいうことは至極もっともだとは思うけど、でも、「わんこつれてきていいですか」と訊く勇気はわたしにはなかったっす。

でも。

ミニチュアダックスとか、チワワとか、ちっこい系の抱っこしてもっていけるぐらいのわんことかだと「立ち会い」もありってことが、そのうちあるようになるかもしれないねぇ。

お洋服着ちゃうようなわんこちゃんなら、きっと、分娩室にはいるための「滅菌してあるお洋服」着れるだろうし。

わんこちゃんを、ほんとのこどものようにずっとずっと可愛がってて、ラブラブで、分娩の時もいっしょにいてほしい〜! みたいなこというひとだって、きっといると思う。

少子高齢化の世の中、一生一回なお産のためにゴージャス産院をオゴッていいというひとも、数の中にはいるだろう。エステ室つきとか、いろいろ羨ましい設備があるとこもあったりするらしい。

犬、立ち会い可!

というの、いまやれば斬新だぞ。ウリにできるぞ(笑)。

入院もいっしょにできるとかさ。せめて、お見舞いにわんこつれてこれるとか。

もしかしてほんとにそういうことをしてしまった産院さんがあったら、うちの旦那さんにアイディア料ください。くださいね。

 

さて、あいにくと(?)わんこの分娩立ち会いはなかったうちの産院。

では、わたしとわんこら、赤さんとわんこらはいったいどうやって「再会」したり「はじめて会ったり」したのか。

まず、わたしの入院していたお部屋の窓から、ちょうど産院の駐車場が見えたので、わたしは旦那がクルマにのっけていっしょに連れてきてるわんこらを散歩させる姿とかをちらちらみることができ、わんこのほうも、わたしが窓あけて「りーちゃーん!」などと叫ぶと「あっ、あんなところにおかあさんが!」と気がついていたのでした。

ウチから産院までは一時間ちょいぐらいかかるし、おみまいにきてくれたら、いていいぐらいの時間ずっといてくれるしで、わんこらはその間じゅう家でお留守番はかわいそうすぎるため(メチャがあとの二匹をいじめるかもしれないし)いつも、クルマにのっけて、おとうさんといっしょに移動していたのです。

そもそも、ふだんから、ちょっとスーパーに買い物とかの時でも、のっけてつれてくようにしていたしね。

でもって、

退院の日、ムシュメしゃんがうまれてはじめて外気というものに触れるという大感動を味わい、ついでに、嫁側両親といっしょに産院の玄関で記念写真だヤッホーというような普通誰でもやるようなことをやった、その直後、

「はい、くみ、こっちきて」

旦那さんの指示で、赤さんを母にちょっとあずかっててもらい、わたしはトテトテと(まだまっすぐ歩けない)駐車場へ。

そこに旦那が、ああ懐かしの犬さん三匹をつれてきてくれて、

「きゃー! メイちゃーん! ジョイちゃーん! リーちゃーん!」

順番に、再会のお喜びをお喜んだのでありました。

そして

「はい、赤さんつれてきて」

うけとってきて、抱っこして、しゃがみ、わんこらにニオイを嗅がせます。

そのついでにリーちゃんはムシュメしゃんの顔をぺろっとやりました。

よってムシュメしゃんのファーストキスは、りーちゃんという、わんこのおねえちゃんにうばわれたのでした。

母が遠くのほうでギャッと叫ぶ声が聞こえたような気もしますが、

健康なわんこのベロは、いろんなもんについついさわっている普通の人間の手よりよっぽど清潔だと思うよ。

   ☆    ☆    ☆

これこのような方法をとったのは、もちろん、我が家という「わんこのテリトリー」「それまで長年ずっとテリトリーだったとこ」ではなく、そこから遠く離れたよその場所で、まず、赤さんとわんことあわせるほうが安全だ、からです。

わんこは、自分のテリトリー内にいる時のほうが攻撃的・防衛的・警戒的ですから。

よそであって、そのまま、ウチまでつれてかえってくる。みんなでいっしょに移動してくる。

ようするに、これまで、新しい犬や猫をもらう時にやってきたのと同じことをしたわけです。

先住犬さんに、「この赤さんもウチの子になるんだよ、ひとつよろしくたのむ」と、ちゃんと仁義をきったわけですね。

 

うちの現在唯一のにゃんこのびしるさんは、慎ましいというか、大人しいというか、別名が『まぼろしニャン吉くん』というぐらい、ひかえめなタイプなので、あんまり心配しませんでした。

ほかの「先住」のみなさんが赤さんにたいしてとる態度をみれば、賢いびしるは「あ、そうなの。この子も、こんどウチの子になったのね」とすぐにわかってくれるからです。

びしるさんは、いまんとこ、あまり積極的に赤さんに寄ってはきませんが、かといって、嫌っているふうてもありません。強烈に好奇心を抱いているふうでもありません。ごく普通に、なにげなく、平和裡に接しています。

 

そんなふうに我が家の犬猫を信頼しまくっているワタクシメではありますが、添い寝をするにあたっては、さすがにちょびっと心配しました。

ウチではもともと、でかいでかいクィーンサイズのベッドに、さらに工夫して継ぎ足しをして、寝室のほとんど五分の四ぐらいを全部ベッドみたいにしてありました(写真室参照)。それもこれも、わんこがみんな、おとうさんやおかあさんの「それなりにそば」でいっしょに寝ることができて、満足できるようにするためでした。

ムシュメしゃんをどうするか。

いったいどこにいれればいいのか?

最初はまよいました。ベビーベッドに寝かしておくほうが安全なんじゃないか、とかも考えました。

でも、「ええい!」と添い寝にしてしまった。

おっぱいをのませながら眠くなった時、わたしがいちばんラクチンなようなかたちにすることにして。

さすがにムシュメしゃんを内側にして、つまり、彼女がベッドから落ちそうなところにはわたしが防壁になるかたちで、寝たのでした。

そこらへんは、妊娠中までは、ふだん、りーちゃんかジョジョがいるところでした。

そこに、いきなり「ちっちゃいの」しかも「首がまだすわってないの」が入り込むのです!

わんこらに悪気がなくても、踏んづけちゃうかもしれない。

はしゃいで走ったりジャンプしたりしてる時に踏だらたいへんだ!

わたしはしばらく、わんこらが近づく気配がしたら、ムシュメしゃんの上にがばっとおおいかぶさって「だめ〜!」と叫んでました。

何回か。

ほんと、何回か。

そんなに大声で叫んだわけではありません。ただし、あくまできっぱり、パワーをにじませて、ぜったいダメだからね、という身体言語を心がけましたです。

すると、賢いうちのわんこたちは、すぐに「あそこには、赤ん坊がいるかもしれない」「いるときには、そーっと静かに歩かないとおかあさんが怒る」と、覚えてくれました。

☆☆☆☆☆

新生児ちゃんの頃というのはそうでなくてもなにかと心配なもので、たとえば、フトンが口にかかって窒息していないかとか、ミルクをはいてないかとか、気にするととにかくなんでも気がかりで、ぜんぜん安心できないものです。だから、おかあさんは、否応なくカリカリしてると思います。寝ててもそんなに気がぬけない。

でも、そんな時期はそう長くはありません。

いまではうちのムシュメしゃんは、おひるねでも、およるねでも、寝る時にはそばにりーちゃんがいてくれるのを目で確認して、にっこりします。時にはりーちゃんの足とか顔とかムンズとつかんで、安心します。りーちゃんも、まんざらでもなさそうな顔をしているような気がします。

☆☆☆☆☆

赤ちゃんがウチにきてから、わんこらには、なにかと面食らうことや、我慢させることがふえたかもしれません。

だから、なるべく、ゆったりサンポをしたり(旦那がわんこつれて、わたしがベビーカーおして)、時間があって天気がいい日には、ドッグランにつれてってあげたりします。わんこらしく、思い切り走って、ストレスを解消すれば、わんこらも幸福な気分でいてくれると思うのです。

☆☆☆☆☆

赤ちゃんができたら、犬猫はあきらめるべき。

それでもなんでもそう思うひとがいるかもしれないし、そう言い張るひともいるかもしれない。

万が一、どうしても、どうしても、あきらめなきゃならないようなことになったら、けっして、そこらに捨てたりしないで、ちゃんと、大切にしてくれるひと、あなた以上にその子を幸福にしてくれるに違いないひとを見つけて、託してくださいね。

 

赤ちゃんが欲しくて欲しくて、なのになかなかできなくて、「かわりに」犬猫をかわいがるようになったとしても(最初の経緯がそうだったとしても)

赤ちゃんがきたからって、犬猫がいらなくなったりはしないものだとわたしは思う。

ひとのこころはそんなに狭いもんじゃないでしょう。

犬猫は、いいおにいちゃんやおねえちゃんになってくれるよ。

大切に可愛がった犬猫なら、きっと。

あなたのベビーの最初の大好きなおともだちに、きっときっと、なってくれると思います。

  

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