11月15日 ASさまよりの、ふたたびのおたより
久美沙織さま、みなさま
ASです。
自分のメイルが続くのが恥ずかしくて、少し時間が経ってから『薔薇の冠 銀の庭』の感想文を送ろうと思っていたら、遅くなりすぎてしまいました(汗)。
と、いうことで、「ばらぎん」の感想です。
まずは、『薔薇の冠 銀の庭』を読んでらっしゃらない方のために、あらすじを。
【あらすじ】
アメリカ留学前、僕は玲子と校庭の欅(けやき)の木の下で別れをかわした。「待っていてくれ」と言葉を残して。一年後・・・僕はまた校庭に立った。帰ることを誰にも知らせないままに。弓道部にいるはずの玲子の姿はどこにもなく、代わりに野枝実がとんできた。彼女は薔薇を育てている"野バラ姫"で、僕に憧れているのだという。そんな野枝実を、玲子は誰よりも恐れていたー。(パピレス掲載の解説より)
【感想】
のえみちゃんです。無敵の少女のえみちゃん!彼女の魅力に尽きます。
のえみちゃんが登場したとたんに、「れいこさんの負け」と、思いましたよ。だって、あなた!校庭でみんなトレパンはいてるのに、自分だけ短パンはいて太もも見せてるベイブに、誰が勝てますか(笑)!!
愛くるしい小動物のようなのえみちゃん。きっと抱き心地最高ですよ。ぷるぷると震える彼女を抱きしめると、腕の中で体が溶けてしまうかのごとく・・・いやあ、もうサイコーっすね(おやじか?)。
でも、高校生のころの私がこの話を読んだら、「ちっ。ぶりっこが勝ちやがったで」と思ったかもしれませんね。当時は可愛い子が嫌いで、かっこいいお姉さんが好きでしたから。今はかっこいい系よりも可愛いベイブのほうが好きかも。結局は一途な女性に男性は弱いと思うな。そういう意味で、れいこさんよりものえみちゃんのほうが強いのでしょうね。
あと印象に残ったことは、前にも書きましたが、80年代の空気が感じられて嬉しかったことです。ひびのくんの部屋の雰囲気とか。ハートカクテルしてますよね(笑)。高校生なのに、黒で統一したナイトクラブみたいな部屋に住んでる。そういえば私の友達にも部屋にバー・カウンター作ったやつがいました(彼は成人してましたが)。「ばらぎん」読んでる間はBGMにシャーデーが聞こえていましたよ。音楽も小説も、時代の空気が真空パックされているものなんですね。よしのぶくんの車がソアラじゃなくてカローラなのが、控えめでよかったです(笑)。
それから・・・話は変わりますが、「ばらぎん」を読んで私は、『新人賞の獲り方教えます@』で引用されていた高橋源一郎さんの言葉を思い出しました。高橋さんは久美さんの文章について「シニフィアンとシニフィエが遊離している」とおっしゃっていましたよね。
私は久美さんの文章を読んでいて、日本語が生々しくないことが心地よかったのです。だから高橋さんがおっしゃったことは、この「日本語が生々しくない」ことと関連しているのではないかと思うのです。
久美さんの文章は日本語の空気感が乾燥していて、小説の物語世界と読者との間に適度な距離感があります。それが私には、読んでいて心地いいのです。私が日本文学よりも外国の翻訳もののほうが好きだからかもしれません。生々しい日本語は、なんだか暑苦しいというか、読者に近寄りすぎというか、日本の湿気が感じられて苦手というか。翻訳ものの日本語のほうが読んでてラクなんですよ。
久美さんのような読者と距離を置いてくれる乾燥した日本語を書く日本の作家は、珍しいのではないでしょうか。私の知る限りではほかには三島由紀夫くらいです(といっても、私はあまり日本の作家の作品は読まないので、私のいうことはあてにはなりませんが)。日本の小説はあまり読まない私ですが、三島由紀夫の作品だけはほとんど読んでいます。物語の空気が乾燥していて、日本の湿気がなくて、ラブシーンが清潔で、大好きなんです。
久美さんの作品も、もっといろいろ読みたいと思います。これからも日本人にはまれな個性を大切にして、私を心地よくさせてくれる作品をいっぱい書いてくださいね。
ASより
きのう掲載させていただいた「麻生さん」の分と連続して、なんだかホメゴロシ
なめにあっているようで……うれしいぞっ!
ばらぎん、たのしんでいただけたようでよかったです(笑)
音楽のほうの「ローズガーデン」みつけました?
いいっすよー。
11月17日づけの再度のメール
掲載ありがとうございます(このメイルも掲載されることを前提に書いているワタシ・笑)。
前回のメイルの補足を少し。
ひびのくんのことを「高校生なのに」と書きましたが、あの時点では大学生になっていたんですよね。でも高校生のころからあんな部屋に住んでいたのでしょう。お金持ちですね(いいなー)。久美さんお勧めの音楽のほうの「ローズガーデン」も探してみますね。
それから、私のお気に入りの日本の作家といえば、三島由紀夫・久美沙織さんのほかに、栗本薫さんがいます。栗本さんのJUNE小説大好きなんですよ。久美さんも栗本さんのJUNE小説が好きだと仰っていましたよね。
久美さんはJUNE/BL小説はお書きにならないのですか?(すでにお書きになっていたら、ごめんなさい)久美さんのスタイリッシュな日本語で描かれたやおいの世界を体験してみたいなあ。
ASより
やおいですか(汗)いや、やろうという話が一度あって、いちおープロットとかも考えたんですけど、諸般の事情で中断しております。これは、天がわたしに「やおい」は書くなというお達しかもしれないと…… 男性同士であるかないかはともあれ、そもそも、わたし、征服欲とか性的欲望とかがとっても元気で強いひとたちを登場人物とするところの恋愛小説、っつーのがあんまり得意じゃないんですよ。ていうか、そもそも「モテるかどうか」に対しての興味がどうもあまりないようで……若いころはまだしも多少は好奇心とか向上心(?)とかがあったんですがね、もう枯れちゃッて。 なにしろ、いろんな相手を誘惑してオチるかどうか勝負するとか、自分が他人にどんな影響力を発揮できるかを確かめるとか、大勢とせっせといろんなカタチのエッチをしてみる、とかいうことに対してほとんどまったく少しも興味関心がないんすね。実際の生活でもそうだし、楽しみのために読むものとかでも。最近女子の間でも恋愛シュミレーションゲームがさかんなようですが(しかもBLだったり)そういうので、「ウフフフフ、こんどはどの子を落としてみようかな」みたいなこと、すいませんが、ぜんぜん思えない(笑)そーゆーのって、ちょーめんどくさい。恋愛的にいってほんとに好きなひとは、ひとりいればたくさんだ。十分じゃないか!
情熱とか欲望とかより、友情とか、尊敬とか、チームを組んで仲間になってなにかをいっしょに築き上げた信頼関係とかでつながっているほーが好きだ……なんつーと、「目覚めてない」ってことになるんでしょうか(笑)しかし、こーゆーやつだから、ドラクエとかみたくパーティーくんで世界じゅう冒険してまわったりするのがいちばん好きで得意なのかも?
とはいえ栗本薫さまの小説は好きです(笑)六道が辻とか、いいっすねぇ。デカダンで。
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